新型コロナウイルスcovid-19感染拡大によるメンタルヘルス支援|休校中の子どもに公認心理師ができること・していること

目白研心中学校高等学校
カウンセリングルーム 臨床心理士・公認心理師
神井知子

はじめに

公認心理師の役割の一つとして筆者が大切に考えているのは、孤立しそうな人がだれかとつながりを感じられるようにすることです。

スクールカウンセラー(以下SC)としては、会う人がその人らしくいられるように手伝うと同時に、学校コミュニティ全体のメンタルヘルス向上に寄与したいと考えています。これは、問題状況がどのようなものであっても、変わらない目標です。

筆者がSCとして勤務する東京都内の私立学校は、3月から休校が続いています。春休み明けの新年度も生徒は登校していません。SCも今は自宅待機で、必要に応じて学校の先生方と連絡をとっています。新型コロナウイルス感染拡大で変化する社会情勢に対応した心理支援について、関連団体が提供する情報も日々更新されています。子どもや学校向けの具体的な活動案も提示されています。

日本公認心理師協会ホームページ(http://jacpp.or.jp/)のリンク集などを参考にしながら、勤務校ではこの先どのような支援が必要になるか、どのような活動が可能か思案しています。

新型コロナウイルス感染拡大において子どもに必要なサポートとは

今後、休校措置が解除され登校が再開したとしても、感染症拡大防止対策は継続されます。

子どもたちは、感染の不安や活動が制限されるストレス、偏見や差別の可能性とともに、世界規模の災害が継続する中でも、それぞれが自分らしく成長する機会を尊重されなければなりません。

学校での先生や友達とのかかわりが減るために孤独な状態に取り残される人がいないように、必要な支援が届くように配慮すると同時に、全生徒の健康な成長が守られるための継続支援が必要になると考えています。

筆者が行った実際の支援

2月末に、勤務校で休校が発表になったときは、当たり前の日常生活が突然断ち切られることになる生徒たちに、ストレスから心身の健康を守る準備をしてもらおうと考えました。

災害時のこころのケア、サイコロジカル・ファーストエイドの原理も参考に、生徒向けと保護者向けの情報を発信しました。

学校の3月は大切な総まとめの時期です。先生も生徒もやりたくてもできなかったことがたくさんあったと思います。筆者も、継続面接していた方々と連絡をとり、それぞれに必要なかかわりを継続できるように、またSC以外の支援も受けられるように留意しましたが、万全とはいかず心残りもあります。

4月、緊急事態宣言により休校が延長され、生徒にとっては目前のゴール(新年度のスタート)が遠ざかる形になり、長期化する自粛からくる無力感の影響も心配でした。あらためて必要な連絡を取り、生徒と保護者向けのおたよりも作成しました。

中高生の自己肯定感の育ちには、自分で選択し決定している感覚が必須です。家にいることが主体的な社会貢献であると強調し、不安が生む偏見や差別についても注意を促しました。

保護者に対しては家庭内での情報との付き合い方や子どもとのかかわり方について提案し、保護者自身も自らのストレスに気づき、セルフケアができるようにと伝えました。

新型コロナウイルス対策下での子どもたちのケアに関する情報も4月になると増え始めましたが、小学生以下の子どもと保護者に向けたものが大半でした。特に中高生向けのものは、ロックダウンが進む欧米や国際機関の資料が参考になりました。

担任の先生やクラスメイトとも会わないまま始まった新年度。学習や受験や進路が心配になる生徒、部活が気になる生徒、人間関係が不安な生徒、家庭に居場所がない生徒。

今までに経験のない学校生活を送ることになるこの状況で、心配や気がかりも、物事の受け止め方や見通しの立て方もそれぞれです。いろいろな思いがあるでしょう。生徒本人や身近な人が感染症当事者になることもありえます。

SCとしての、生徒への個別のケアの内容も、先生方との今後の連携の重心も変化するだろうと予測しています。

インターネットを活用した支援

現在、それぞれの学校で、また塾や習い事でも、オンラインの双方向授業や動画配信形式の授業などが導入されつつあります。

子どもたちはインターネットの中でコミュニケーションをとることが普通という年代ですから、不自由さがありつつも柔軟に適応しているように見えます。

SCの活動も、地域や学校によりますが、電話相談やメール相談だけでなくビデオ会議システムでのオンライン面談などの遠隔相談を取り入れているところもあります。

遠隔相談を実施するためにはセキュリティとプライバシーが完全に守られるかどうか、慎重に検討しなければなりません。ですが、生徒が感染症やストレス対処について学ぶツールの配信や、心身の健康チェックをするための定期的なアンケート調査などであれば実施しやすいと思います。

一方で、対面することの価値もあらためて明確になりました。友達との登下校、休み時間のおしゃべり、行事などを含めた全体が学校生活です。カウンセリングルームで実際に会ってこそ伝わることもあると実感しています。

公認心理師としてするべきこと

4月中旬の国連の報告では、世界188か国15億人の児童生徒が休校措置の影響を受けているそうです。子どもたちは世界共通で「命が大切」「自分の我慢が社会貢献」「人とのつながりが大切」という体験をしています。

事態が収束したときは、子どもたちが、自分の行動は世界とつながっていて世界を変える力があるという誇りや責任を感じられる状態になっていることを願っています。

そして、災害などの非日常のストレスを受けたときの対処法を身に付け、自分の心も人の心も大切にする人になれるといいと思います。

そのために公認心理師としてやるべきことは、基本は平常時と同じで、自分の心身の健康を保ち、アセスメント力を鍛え、使える知識や方法をアップデートしていくことではないでしょうか。

事態の早期の収束を祈りつつ、1人で置き去りになっている人がいないか注意しながら、子どもたちの回復・成長につながるような支援ができるようにと考えています。

 


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