新型コロナウイルスcovid-19感染拡大によるメンタルヘルス支援|ダイハツ工業株式会社における新型コロナウイルス対策とメンタルヘルス支援

ダイハツ工業株式会社 安全・健康推進室 保健センター
臨床心理士・公認心理師
春藤行敏

 

ダイハツ工業株式会社では、国内外で約13,000人の社員が働いている。自動車を製造し販売するため、管理部門、開発部門、製造部門などが連携し、日々業務を行っている。筆者は保健センターという社員の健康管理を担う部署に所属しており、そこでは筆者を含む4名の公認心理師をはじめ、計60名の医療専門職が協働し、社員の健康管理を行っている。

今回、弊社が取り組んでいる新型コロナウイルス対策や、その中で求められるメンタルヘルス支援について述べる。

全社的な対応

日頃から、医療専門職は連携しながら業務を行っており、新型コロナウイルス対策においても医療専門職や事務スタッフが一体となり、産業保健活動を推進している。その取り組みの一部を紹介する(医療的なケア以外に、各部門が取り組んでいる全社対応も含む)。

 

1)他社状況の把握・情報共有

自動車業界間での情報共有を密にし、陽性者や濃厚接触者の対応、保健所との連携などについて日々確認を行っている。

 

2)感染予防対策

(1)周知・啓発:社長メッセージの発行、朝礼、社内放送、ポスターなどによる注意喚起を行い、社員それぞれが自分ごと化し、感染機会の低減を図っている。ほかには、在宅勤務や時差出勤、ビデオ通話アプリなどを活用した打ち合わせを推奨し、社内外の会議やイベントの縮小・中止・延期を行っている。事業場によっては、レイアウト変更によるソーシャルディスタンスの確保、飛沫感染防止カバーの作成、サーモグラフィによるセルフチェックなどを予防策として講じているところもある。

(2)状況管理:事業場ごとの体調不良社員数の把握および管理、マスクや消毒液などの在庫管理のほか、現在の社内状況の正確な把握に努め、優先順位をつけて対応を行っている。また、疑似感染者用診察室を設け、不測の事態に備えている。

*疑似感染者…感染が疑われる方

 

3)疑似感染者等の職場対応

(1)職場・本人用の対応マニュアル作成:マニュアルには
①日常管理(手洗い、咳エチケット、日々の健康管理方法)
②体調不良者への対応(発熱や呼吸器症状の確認、健康チェックシートの作成)
③疑似感染者への対応(人権やプライバシーの配慮、濃厚接触者リストの作成)
④清掃・消毒方法
などを記載し、全社展開を行っている。

(2)疑似感染者発生時の対応
①発生職場の聞き取り・正確な事実確認

②発生職場の現認

③保健所提出書類の仮作成

④職場消毒

⑤関係先との調整連絡

といったフローで対応を行っている。どのプロセスにおいても迅速な対応が求められるが、当事者の人権や職場の動揺にも十分配慮することが必要である。

(3)海外赴任者対応:感染拡大により、海外赴任が延期になった社員、一時帰国を余儀なくされた社員も多数出ている。一方、帰国することなく現地で働く者や帯同家族にとっては、日本のような医療体制が整っていないこともあり、強い不安を感じている。そのため、人事や現地法人と連携、情報共有を密に行い、相談窓口紹介などの情報発信を行っている。

 

メンタルヘルスの対応

弊社では、特別なメンタルヘルス対応を行っているわけではないが、日々の相談業務の中で、新型コロナウイルスや在宅勤務に関する相談が少しずつ増えている。

例えば、休職中の社員から「現在通所しているリワークに行けずどう過ごせばいいかわからない」「芸能人が感染するニュースを見て身近に感じ不安になった」などの相談が出てきている。全社で在宅勤務を進めており、社員の受け入れ態勢の見通しが立ちにくく、復職の準備が整った社員の復帰が少し後ろ倒しになる事態も起きている。

休職中の社員に対しては、全社の情報発信が伝わりにくく、不安を感じやすい可能性がある。そのため、緊急事態宣言発令に伴い、「外出自粛」「3密対策」などについて案内を送付するとともに、個別に電話相談を受け、不安軽減につなげている。

公認心理師ができること・求められること

普段通りの生活ができない日々が長期化した場合、さまざまな症状が出てくる可能性が考えられる。

在宅勤務により、働くロケーション、仕事の進め方、情報共有の仕方、人間関係の取り方、家庭での過ごし方といったライフスタイルが一変し、戸惑いを感じることも多い。

変化はストレスにもなり、いつまで続くのか見通しが立たない状況は社員の不安につながると思われる。そのような中、相談内容が守られる心理職に相談できることは、社員の不安軽減につながる面が大きいと思われる。今後、弊社では産業医、保健師、公認心理師が一体となり、漠然とした不安感の増幅や長期化する在宅勤務による心身の健康リスク、それに伴う対処法について周知する資料の作成を検討している。

基本的なスタンスとして、産業医・看護師・その他医療専門職、人事・総務などの関連部署、医療機関・リワーク機関・保健所といった外部機関と連携し、過度に不安視するのではなく、一つのチームとなって支援策や支援フローなどを十分検討することが必要になると考える。


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