新型コロナウイルスcovid-19感染拡大によるメンタルヘルス支援|福祉施設の公認心理師ができること・していること

はじめに

新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめてから、皆さんの生活、暮らす街、一緒に過ごす人たちにはどのような変化がありましたか?

筆者は、障がいや難病のある人たちの「生活」のすぐそばで働いています。

職場には、障がいや難病のある人たちの
・共同生活を支援するグループホーム事業
・自宅での生活、外出支援を担うヘルパー事業
・利用者の「こんなふうに生きていきたい」という思いをかなえるさまざまな福祉サービスや制度とのつながりをつくる相談支援事業
があります。この3つの事業は、障がいや難病のある人たちの衣食住の核となる部分を担っています。

今回は、筆者の職場から見える障がい福祉分野の現状と、心理師の支援についてお伝えします。

利用者を取り巻く状況

障がい者の支援といえば、障がい者が集まって作業所とよばれる場所で内職をしたり、焼き菓子を作ったり、神経難病の方がヘルパーさんの介助を受けたりする場面を思い浮かべる人が多いかもしれません。障がい者同士が支援を受けながら共同生活を送るグループホームなど、衣食住の大部分を担う施設もあります。

利用者は、障がい福祉サービスを使い、いろいろな場所や人とつながり、毎日を過ごしています。しかし、新型コロナウイルスに係る緊急事態宣言を受け、規模を縮小して対応している通所施設もあります。そこでの食事や入浴に毎日の生活を支えられている利用者もおり、通所施設にとっても苦渋の決断です。

通所施設に通えなくなると、利用者は、自宅やグループホームなどで1日を過ごすことになります。通常、グループホームの昼間の時間帯は、利用者は通所施設で過ごしているので支援者はいません。そのため、手を動かす・歩く・考える・人と話をするなどの機会が減ってしまいます。

現在は、グループホームなどでも昼食の提供を中心に、それぞれの現場でできる限りの支援を行っています。

支援者や利用者の不安

先述のとおり、現在は、利用者の生活の場で支援を行うことが多くなっています。

支援者は日々奮闘しながら、多くの利用者と関わることで自身が感染するのではないか、また利用者に感染させるのではないかという不安を抱えています。

私たち同様、利用者の体調不良も突然生じます。利用者によっては、自身の体調の変化を言葉にすることが難しい人もいます。その場合、毎日の検温と行動面の変化などの観察から、その異変を感じ取るしかありません。

体調に変化が見られたときは、受診先に同行し、受診後には医療者からの指導のもと、その療養生活を支援します。

もちろん、新型コロナウイルス以外にも恐れる感染症や疾患があります。この3、4月にも、高熱、嘔吐、下痢などを呈す利用者がいました。新型コロナウイルスに限らず、症状が見られた際には、マスク、手袋、消毒液などが必要です。たいていの施設には、このような事態に備え、衛生用品が常備されています。しかし、今回のような長期間かつ感染力の高い感染症に太刀打ちするほどの備蓄はありません。多くの施設で、マスク、消毒液、キッチンペーパー、ペーパータオルなどが足りない事態に陥りました。

外出自粛を中心とした生活が、自分や身近な人を守ることにつながると理解している私たちであっても、先の見えないこの状況にしんどさを感じるものです。利用者のなかには、それを理解するのが難しい人もいます。

楽しみにしていた外出がなくなること。その代わりの予定を立てられないこと。ちょっとした体調不良であっても、自室で過ごすよう強く言われること。着替えや排泄、食事、入浴の介助時以外、人と関わることができないこと。

支援者は、利用者のそばにいて、利用者のしんどさを感じ取り、受け止め、自分にできることを必死に模索しています。

公認心理師としてできること・していること

この現場に身を置く心理師として、筆者が今、最も大切にしているのは、普段の仕事内容や職種にとらわれず、支援者と一緒に動きつづけることです。

その際には「サイコロジカル・ファーストエイド(Psychological First Aid:PFA、以下PFA)」の指針を参考にしています。

今回のような困難な状況にある人たちが、気持ちを安定させ、共に困難を乗り越える手法の一つです。PFAの行動原則には「みる:LOOK」「きく:LISTEN」「つなぐ:LINK」があります。

現在、筆者はグループホームの支援にあたっています。利用者と共に昼食を考え、買い物に行き、調理をして、食べてもらいます。食後は、いろいろな話をしながら、利用者にもできるストレッチなどを行います。

この支援での「みる:LOOK」は、利用者と会話しながら、顔色、服装、行動などを大切に観察することです。また、建物内の換気、物品の消毒などを行いつつ、衛生用品の在庫を確認します。支援者同士が協力し合い、互いに安心して働き、利用者に安全な環境を提供するためにも大切にしたい行動です。

「きく:LISTEN」は、1日の過ごし方や体調のほか、利用者自身が何をしたいか・何を食べたいか思い浮かべ、選び、決めることができるか、和やかで朗らかな雰囲気を大切にしながら、心身の状態のアセスメントに役立つ情報を多く聴くよう努めています。

最後に、「つなぐ:LINK」です。利用者との会話、さまざまな観察から気になった点、対応への反応など、次の支援者に伝えたいこと、実践してもらいたいことを丁寧に伝えるようにしています。そして、職員間で、新型コロナウイルスに関する正しい情報を共有し、感染症に関する知識を学び直しました。現場に入る支援者の不安や心配な気持ちが和らぐよう、わかりやすい言葉で、留意するポイントなどを資料にまとめました。

おわりに

筆者が支援している対象は、利用者の「生活」です。それらは人間の営みにとって、当たり前のことの連続で、人に目を向けてもらいにくい分野かもしれません。しかし、今、多くの支援者が、協力し、励まし合い、限られた物品を駆使し、利用者が安全・安心・笑顔のある穏やかな生活を送れるように奮闘しています。

筆者は、この騒動前まで、自転車で街中を走り回って仕事をしていました。朝から夜遅くまでたくさんの人がいる、元気と活気のある街でした。それが今では、とても静かな街に姿を変えています。騒動が落ち着き、再び自転車でこの街を走り回ることができる日を、利用者と笑顔で外出ができる日を、地域の支援者と笑顔で集える日を、心から願い、明日からも自分にできることを一つひとつ大切に、前進していきます。

 

(文・ライター/社会福祉法人つむぎ福祉会 生活支援センターコットン 相談支援担当 臨床心理士/公認心理師/相談支援専門員 永福沙都子)


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