新型コロナウイルスcovid-19感染拡大によるメンタルヘルス支援|総合病院の公認心理師ができること・していること

はじめに

新型コロナウイルス感染拡大により、日本中がこれまでにない危機的状況となっています。最初のうちは他人事にしか思えなかった新型コロナウイルスへの感染が、少しずつ身近に迫っているように感じられ、不安を募らせている人も多いのではないでしょうか。

総合病院においても、新型コロナウイルス感染拡大により普段とは違う対応を求められることが多く出てきています。総合病院の公認心理師が、今どのような患者さんからの訴えを聞き、どう対応しているのかを紹介します。

患者さんを取り巻く状況

新型コロナウイルス感染拡大により、現在、総合病院は大きな不安に包まれています。病院スタッフは、仕事のみならず私生活に対しても懸念を抱えながら日々を過ごしています。また感染拡大により、体調面に不安を抱える患者さんたちの動揺は、計り知れないほどでしょう。

現在(4月10日時点)、筆者の勤務先では外来も入院病棟も通常通りに業務を行っています。ただし、入院病棟では面会制限を行っており、主治医の許可が出た人のみ面会が可能となっています。

病気と闘っているとき、家族や友人とのつながりは非常に大きな支えです。ただ、感染が入院病棟で起こってしまうことで命の危険にさらされる人がいる以上、制限は必要な措置でもあるのです。

外来に関しても、病院に足を運ぶこと自体が感染リスクを上げてしまう懸念から、予約を延期せざるを得ない人が多くいます。公認心理師が行っていた地域での発達障害児の親へのサポートグループも中断を余儀なくされている状態です。がん患者さんのピアサポートグループなども同様の状態です。

入院病棟の患者さんから寄せられる不安と対応

現在、入院病棟からの依頼件数が少しずつ増加しています。面会制限が実施されたことで、入院生活に対する強いストレスを感じる人が増えたためです。子どもをもつ母親などは、面会もできず、大部屋では電話もできないため、長らく子どもと会うどころか話もできていないと嘆いています。高齢の親を残して入院している人も、親の身を案じながらも何もできない自分にいら立ちを感じているとのことでした。

筆者の勤務先では新型コロナウイルス感染症に罹患した患者さんの受け入れも行っています。そのため、自分も感染するのではないかと不安になり部屋からあまり出られなくなった人もいます。

入院病棟では、できるだけ病棟に顔を出し、話し相手となるよう努めています。

普段カウンセリングはマスクをせず表情が見えるようにして行いますが、今は、必ずマスクを着用し、少し距離を大きめにとって実施するよう心掛けています。

雑談をしていることが多いのですが、その雑談で心が軽くなり、ストレスが低減したと患者さんからも言ってもらえています。

手芸道具を持っていき、一緒にものづくりをするときもあります。テレビを見ていると、コロナウイルスの話題一色で、気持ちはさらに沈みがちとなります。そういった患者さんに別の気晴らしを提供することで、気持ちの落ち込みを緩和する効果があります。

外来の患者さんから寄せられる不安と対応

外来に関しては、予約を延期する方が多いため、直接不安な気持ちを聞くことは少ないです。ただ、来院しないからといって穏やかに過ごしているわけではありません。特に育児不安を訴えていた母親などに対しては、手紙を発送し、気持ちがしんどいときには電話もしくはメールで連絡をしてほしいことを伝えました。

数名、連絡をくれた人もいます。長期の休みで子どもとの関係がうまくいっていないことや、自分一人の時間がとれず疲れ切っていることを話してくれました。子どもを連れて病院へ行くことは不安だけど、話をしたかったと言ってもらえたので、この方法はよかったのではないかと感じています。

公認心理師としてできること・していること

とても大きな範囲で不安が募っている状況において、公認心理師ができることはたくさんあるのではないでしょうか。総合病院内だけでも、患者さんの心理的な支援のみならず、疲弊しているスタッフにさりげなく声をかけて少し気持ちを聞くことも必要です。公認心理師が関わる患者さんは限られます。けれども、患者さんに関わる看護師を心理的に支えることは、すべての患者さんを支えることにつながります。

また、このような状況でも、周囲とのつながりが途切れていないことを患者さんに伝えることも公認心理師ができることです。

非日常が続く中でも、これまでのつながりがちゃんと保たれていることを明らかにすることで、大きな安心感が得られます。

そうした動きは、公認心理師自身の心の安定にもつながります。普段どおりに仕事ができず、私生活が不安定な状況なのは公認心理師も同じです。患者さんといつもと変わらずつながっていることを確認することが、自分にとっても大切です。

自分の心の状態、そして周りの人の心の状態をしっかりと冷静に見つめることが公認心理師だからこそできることかもしれません。

強すぎる不安を抱えないよう、新型コロナウイルスのことだけで頭がいっぱいにならないよう、さりげなくサポートすることが大切です。また、こんなときだからこそ、受け身ではなく一歩前へ出て、安全に配慮しながらつながりを強めることも公認心理師として行っていきたいことです。直接会わずとも心理的なサポートはいくらでも可能だと思います。

 

(文・構成/医療技術局 臨床心理士・公認心理師 あいいろこっこ)

 


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