求められる心理職の役割|リエゾンチームの心理士として

はじめに

医療・教育・福祉・司法・産業……と心理職にはたくさんの働く場所があります。

筆者は医療領域でキャリアをスタートさせました。現在は総合病院の心理士として、精神科だけではなくリエゾン領域の業務も担当しています。

リエゾンチームとは

リエゾン(liaison)とはフランス語で「連携」や「橋渡し」を意味します。

リエゾンチームとは、身体疾患を持つ患者さんの精神的な状態を評価し、必要に応じて早期介入することで精神的な病気を予防し、患者さんの早期退院を目指す多職種チームです1)

重い病気を患うことは、時には精神的な不調をきたします。精神的な不調は、身体疾患の回復を遅らせたり、身体疾患をより重くしたりすることが知られています2)。リエゾンチームでは、多職種が連携し、身体疾患を伴う患者さんの精神的な問題の予防と治療に当たります。

リエゾンチームにおける心理士の必要性と現状

身体疾患を持つ患者さんへの精神的なケアが注目され、精神科リエゾンチームが構成されるようになりました。精神科リエゾンチーム加算の要件では、リエゾンチームは医師と看護師に加えて、心理技術者、薬剤師、精神保健福祉士、作業療法士のいずれか1人の3人以上で構成する必要があります。この「心理技術者」が心理士のことを指しており、2018年から公認心理師も入っています。

病院における心理士の配置状況はそれほど多くありません。全国63国立病院から回答を得た2014年の調査では、約4分の1の病院で心理士は雇用されておらず、雇用されていたとしても常勤・非常勤ともに「1人」にとどまる施設が多かったようです3)

リエゾンチームは組織されているものの、その中に心理士が加わっていない病院もあり、リエゾン領域で活躍している心理士の数はまだまだ多いとはいえません。

しかし、公認心理師資格の誕生により、国家資格としての信頼や心理士業務の診療報酬化が期待されることから、医療現場における心理職の活躍の場はますます広がることが見込まれます。リエゾンチームにおける心理士の役割やニーズも増えていくのではないでしょうか。

他職種は心理職に何を期待するか

心理的評価・介入に加えて、他職種からは患者さんがどういう人物であるのか教えてほしいと声を掛けられることがあります。また、患者さんが高圧的な態度をとっているときや無口でふさぎ込んでいるときも、精神的な疾患のアセスメントのみではなく、どうしてそのような状態になっているのか分析を求められることもあります。その際には、できる限り専門用語は使わず、わかりやすい言葉で見立てを共有するようにしています。

一方で心理職の医学的知識の不足を他職種から指摘されることもあります。筆者も初めて参加した多職種カンファレンスで、皆が使う基礎的な医学専門用語が理解できず、カンファレンスの内容についていけないこともありました。

病院で働くためには、心理職であるとともに医療職の一員であることを自覚し、それぞれの専門性を発揮していくことが大切です。

リエゾンチームの仕事とやりがい

筆者が担当している領域は、主に循環器内科と小児科です。

循環器内科の仕事は、「心臓病とメンタルヘルス」に関する心理教育や心理的評価、予防を目的としたストレスマネジメントです。

循環器内科の患者さんは、病気の傾向から長期にわたって入院することが多く、不安や落ち込みを感じたり、ストレスをため込んだりすることがあります。心臓病の再発防止のためにはなるべくストレスをためないようにすることが大切です。患者さんには面接や質問紙を使ったさまざまな精神的評価を行い、ストレスマネジメントの技法などを使って介入します。

小児科領域でも循環器内科と同様に患者さんの心の健康を保つ働きかけを行います。小児科では、患者さんが子どもであることを踏まえた対応を心掛けています。というのも、子どもに対して「気分はどう?」と質問をしても、子どもは感情を言語化することが大人に比べて苦手で、心理士側も子どもの感情を捉えることができないからです。

また、子どもが注射を恐れるように、医療者を恐れることも多いため、お絵かきや遊びを通して関係を築き、子どもの変化を観察していくことがよくあります。

身体科ではメンタルケアがついつい後回しになるなか、患者さんのメンタル面に注目する心理士は貴重な存在です。また、リエゾン領域では心理士の裁量がある程度認められているため、主体的に考えてケアができることにやりがいを感じます。

総合病院での心理職の雇用を増やすために

考えるべきことは心理職を雇うメリットです。さまざまな立場から考えてみましょう。例えば、「心理職を雇うことで身体疾患を持つ患者さんのうつ病を防ぐことができる」事実があれば、心理職の存在は患者さんや医療職にとって大きなメリットです。

「心理職が介入することで早期退院につながる」なら、医療費削減の観点から国にとっても大きなメリットとなります。このように、「心理職がいることのメリット」を心理士自身がアピールしていくことが肝心です。

その方法の1つが「研究」であると筆者は考えます。実際にデータを集めて実証的に分析し結果を積み重ね、学会などの機会を利用して対外的に発信していきましょう。

誰もが心理職を雇うメリットを認識すれば、雇用は増えていくのではないでしょうか。

 

引用・参考文献
1)厚生労働省.精神科診療報酬 精神科リエゾンチーム加算.https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/h24_02-07-20.pdf(2020年1月閲覧)
2)Surtees, PG. et al. Psychological distress, major depressive disorder, and risk of stroke. Neurology. 70(10), 2008, 788-94.
3)一般社団法人日本臨床心理士会第2期後期医療保健領域委員会.医療領域における臨床心理士に対するニーズ調査結果報告書.2014.http://www.jsccp.jp/suggestion/sug/pdf/iryou_20141202.pdf(2020年1月閲覧)

 

(文・ライター/公認心理師 洲脇利広)

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