【わたしのヒストリー】子どもの人生に大きく影響を与える仕事

跡見学園女子大学心理学部
准教授
小栗貴弘

いまの働きかた

現在は大学教員として働く一方で、週1日はスクールカウンセラー(以下、SC)として学校現場で臨床活動をしています。

勤務しているのは夜間の定時制高校です。SCは中学校への配置が多いので、私は少し変わった経歴かもしれません。以前は中学校でSCをしていましたが、高校には高校の臨床の奥深さがあり、今でも現場から学ぶことが非常に多いです。

SCとしての勤務時間は自治体によって1日6~8時間とさまざまですが、私は15時半から6時間の勤務となっています。SCの給料も自治体によりますが、有資格者の場合だとおおむね時給5,000円程度のところが多いようです。

仕事の内容や相談の内容は非常に多岐にわたります。このあたりがほかの心理職との大きな違いです。仕事の内容としては、生徒の相談はもちろん、教員や保護者の相談、さらには校内研修の講師なども行います。

相談の内容も、心の悩み、不登校、発達障害、学業、虐待など、幅広い知識が求められます。こうした相談内容に対して、学校組織や教育課程を理解した立場から支援していく必要がありますので、心理学だけでなく学校や教育に関する知識も必要とされます。

心理職をめざした理由

こういうところで書くのに値するかわかりませんが、私の心理学との出会いは全くの偶然でした。

高校3年生のころ、進路を考えた当時の私は「人に教える仕事に就きたい」と考えて教育学部を目指しました。ところが、残念なことに志望校に落ちて浪人生活が決まってしまいました。そのとき、失意の中で見直していた志望校のパンフレットで「臨床心理学」という学問を知って、興味を持ったのです。当時、空前の「心理学ブーム」のなかで、それを知らなかったということは、私がどれほど自分の進路について真面目に考えて勉強していなかったかを意味していますので、お恥ずかしいかぎりです。

ただ、興味の持てる学問に出会えたのは幸運で、浪人時代を経て臨床心理学を学べる大学や大学院に進学しました。そして、精神保健領域、医療領域などで経験を積み、最終的に学校臨床領域に落ち着いたのは、もともと教育学部を目指していたことが関係していると思います。

実際になってみて

子どもたちの人生に、これほど大きく影響を与える職業は、ほかにはないのではないかと思います。この「大きく影響を与える」というのは、良くも悪くもという意味です。自分の関わり方しだいで、その子どもや保護者の人生が大きく変わってきます。発達段階でいえば、学童期は人格の基礎を築く時期であり、思春期は大人への移行期といえます。そのような重要な時期に深い関わりができるのは、学校領域で働く心理職の醍醐味であるとともに、非常に責任を感じる部分でもあります。

また、学校臨床では子どもの健康な部分を観察しやすいという特徴もあります。学校は生活場面であり、授業や行事、休み時間などで適応的に過ごしている子どもの姿を見ることができます。問題がある部分を治すという視点だけでなく、適応的に過ごしている元気な姿も含めて総合的に子どもを見ることができるというのも、学校臨床ならではかもしれません。

これからの展望・希望

臨床心理学には「科学者―実践家モデル(scientist-practitioner model)」という言葉があります。心理職は臨床実践を行うだけでなく、研究者としての科学性も持つべきだという意味です。

先に述べたように、現在、私はSCとして働く一方で、大学教員(研究者)としても働いています。現在、おもに関心を持って研究しているのは、高校中退予防です。このテーマは、SCとして高校で勤務するようになってから関心を持ちました。

私の研究の関心は、常に臨床現場から生まれてきます。言い換えれば、研究成果を臨床現場に還元できるという意味でもあります。こうした科学者としての視点は、臨床で役立ちます。「勘」に頼ることなく、科学的・論理的な視点から相談者のニーズに応える、そうした姿勢が「公認心理師」をはじめとした公益性の高い資格全般に求められるでしょうし、私が持ち続けていきたい姿勢でもあります。

心理職に就きたいと思っている学生へ

世のなかのさまざまな出来事や、いろいろな人と関わることに関心を持ってください。

学校臨床での心理実践は、相談室のなかにとどまりません。教室や職員室で、子どもや先生と関わります。何なら、体育の授業に参加してしまうことだってありえます(珍しいとは思いますが)。家庭訪問もすることがあります。そういう意味では、みなさんが想像するような、相談室で1対1のカウンセリングをしている「心理職像」とは少し違うかもしれません。でも、そのダイナミックに動き回る心理実践の面白さに触れてしまったら、抜け出せなくなること間違いなしだと思います。

この記事を読んでいるみなさんに、いつの日か学校現場でお会いできるのを楽しみにしています。

1週間のスケジュール

月、水、木、金曜日:大学で勤務
火曜日:スクールカウンセラー(夜間定時制高校)

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