心理学を学びたい学生へ|海外大学進学という選択 —アメリカで学ぶ最先端の心理学ー

はじめに

中学校や高校では心理学という授業はありません。そのため、心理学は中学生や高校生にとってなじみがなく、多くの人は高校を卒業した後に大学で出会う学問だと思います。筆者の場合は、中学生のころから心理学を勉強したい、心理カウンセラーになりたいと、漠然とした将来の夢を持ち続けていました。

しかしながら、高校生になって、いざ具体的な志望校を決めなければならない時期になってもぼんやりとした心理学のイメージしかなく、志望校の絞り込みには、自分の模試の偏差値くらいしか参考になる条件がありませんでした。

なかなか照準が定まらない状況のなかで、筆者が出会った選択肢の一つに「海外大学進学」がありました。「納得して自分の進む道を決めていきたい」、そんな方への後押しとなるような記事をお届けします。

アメリカの大学で心理学を学ぶメリット

まずは、アメリカの大学に進学する魅力を伝えます。何と言っても、最先端の心理学研究を学べる点は大きな魅力でしょう。アメリカには、心理学研究の中枢の一つであるAmerican Psychological Association(アメリカ心理学会:通称APA)があります。

授業はAPAの最新の情報にもとづいて行われます。同時に研究法や論文の書き方に関する細かなルールなど、研究者として大事な基礎も身に付けることができます。

次に、アメリカの大学で授業についていくための努力を通して、自然と英語力が鍛えられることも大きなメリットといえます。大学の課題はアメリカ人大学生にとっても、量・質ともにタフです。そのような課題に取り組むことで、特に、リーディングやライティングの力が養われていきます。

臨床心理士や公認心理師を目指すためには、基本的に大学院へ進学し定められたカリキュラムを修了する必要があります。日本の大学院入試では、ほとんどの学校で、「英語」が受験科目として設定されています。筆者の場合は、留学したことで院受験のための英語を勉強する必要はなくなっていたので、専門科目に注力することができました。また、英語文献を抵抗なく読めるようになるため、最新の情報を自分で手に入れやすくなります。

アメリカの大学では、授業にもよりますが、科目ごとに中間試験が2~3回あり、学期末には期末試験というように、かなり頻繁に試験があります。学部生のうちに幅広い基礎知識を定着させることができると思います。

総合大学の規模は大きく、脳やホルモンといった生物心理学から、集団心理のような社会心理学といった具合に、学べる心理学の分野が広いです。広い視野で、深めていきたい心理学の分野についてじっくり考えることができました。

一般的な、生物心理学、社会心理学、臨床心理学、認知心理学、発達心理学というような授業のほかにも、自閉症スペクトラムに焦点を当てた授業や、動物行動学、人工知能などのコンピューターサイエンス系の珍しい授業も設置されていました。

また、専攻以外の授業のバリエーションも豊かで、自由に選択できます。筆者は、考古学や人類学、生物学と文理関係なく授業をとりましたが、大変興味深かったです。さまざまな分野の授業に触れることで、自分の新たな興味関心に出会う可能性もあります。

新たな興味関心に出会ったときも、日本とは違ってアメリカでは専攻を自由に変更できます。学部生の間は、多様な学問に触れ、自分の得意なことや好きなこと、興味のあることについて考える時期と認識されているように感じました。

アメリカの大学に進学するデメリット

アメリカの大学に進学するデメリットとして、公認心理師の受験手続きが国内の大学を卒業した場合よりも、手間がかかってしまう点が挙げられます。

公認心理師の資格制度が誕生してからあまり経っていないことも影響しているかと思いますが、大学で受けた授業内容や授業時間の証明書など、国内の大学を卒業した受験生よりも必要となる書類の種類が確実に多いです。

それから、国内の大学に行くよりもかなり高い学費や生活費がかかります。家族からの支援や、奨学金に頼りながら留学している学生がほとんどです。学外でアルバイトをすることは、学生ビザでは許可されていません。学内でのアルバイトであっても時間に制限があり、大きな収入は見込めません。

ただし、寮長になることで寮費や学食代が免除されたり、そのほかにも優秀な成績を収めることで給付型(返済しなくてもよい)奨学金を受けたりすることができます。費用を工夫する方法はたくさんあるので、留学生活において情報収集は最重要です。

留学の準備

はじめに、大学の選び方についてです。日本に住む高校生だと、大学を実際に見に行くのは少し大変かもしれません。アメリカに住む高校生であっても、直接大学を見ずに決めることは意外と多く、その際にはインターネットが活用されているようです。

アメリカの大学は短期大学も合わせると全部で4,000校ほどあるので(日本では、短期大学を合わせても1,200校程度)、ある程度ざっくり絞り込んでいかなければなりません。

筆者は志望校を決める際に、心理学で有名な大学のランキングなどが掲載されているウェブサイトから10校程度に絞りました。それから、各大学のホームページで、カリキュラムや設置されている授業および、学費に関する情報(Admission〈入学〉のページからtuition〈授業料〉をみることができます)を集めて、3〜5校程度に志望校を絞りました。

大学紹介ツアーも年中開催されているので、実際に見て大学の雰囲気を感じるのもよいかもしれません。

志望校を決めたら、その大学に提出が必要な書類を調べます。留学生の場合は、TOEFLという語学試験のスコアの提出が求められることが多いです。有名私立大学の場合は、SAT(大学適性試験)のスコアも必要です。SATはアメリカの高校生も受ける試験で、日本でいうところのセンター試験のようなものです。

TOEFLとSATのどちらの試験も準備にかなり時間がかかるので、四年制大学入学を目指すなら、高校二年生くらいから本格的に準備を始めることをおすすめします。

各大学のホームページではTOEFLやSATの基準となるスコアが記載されています。高校での成績(平均評定)と大学進学の志望動機を書いたエッセイもかなり重視されるようです。 TOEFLもSATもかなり難しい試験ですが、定められた日時に、たった一回の試験を受けるのとは違い、年に何度も受験することが可能です。エッセイも時間をかけて準備をすることができます。

筆者は、英語に自信がなかったうえに、高校時代の全般的な成績が十分とはいえませんでした。大学によってさまざまですが、四年制大学を目指したい方は、4段階の平均評定(通称GPA)で3.5以上を目安にしておくとよいと思います。

アメリカの大学では編入制度が充実しているので、大学に入ってから良い成績を修め、狙いの大学に編入するというルートもあります。二年制大学(短期大学)は学費も安いので、留学費用を抑えることができます。特に、州立大学は連携体制が整っており、編入の手続きが圧倒的に楽です。最終的な目標である四年制大学に照準を合わせて、二年制大学にいったん入学をするというのも一つの手段でしょう。

おわりに

ここではアメリカの大学に焦点を当て、海外大学進学という一つの選択肢を紹介しました。海外留学は、とにかく手間や費用がかかります。英語がわかる人が周囲にいなかったので、山のような書類を自分で準備しなければならず、留学前の期間でかなり大変な思いをしました。大学に入ってからも、異文化の中で、自分の決断と責任で勉強をしていかなければなりません。しかし、新鮮で刺激的な環境の中で学んだ経験は、意欲や探究心を促進してくれたように感じています。

筆者は、アメリカの大学卒業後に、日本の大学院で臨床心理系のカリキュラムを修了しました。今後は進学し、臨床の仕事と併行して心理学の研究を続けていく予定です。

海外の大学に限らず、進路を決めるときには自分の気持ちと何度も向き合い、納得して前に進むことが大切です。皆さまの参考になれば幸いです。

 

(文・構成/東京大学大学院教育学研究科 原山郁花)

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