求められる心理職の役割|電話相談~対面カウンセリングとの違い~

コロナ禍における電話相談の需要

新型コロナウイルスCOVID-19による未曽有のパンデミックにより、電話相談の需要が増しています。

もともと電話相談は、自殺防止を目的とし、イギリスで始まりました。24時間体制で行われたものもあるようです。そこから徐々に地域の実情に合わせ、実施団体や用途別にさまざまな窓口が設置されています1)

筆者は主に家族相談に対応しています。緊急事態宣言下で相談件数が増し、その状況が続いています。コロナ禍に関連する、もしくはコロナ禍も相まっての悩みごとが多くなっています。

アフターコロナの現在、筆者は「連携」に課題を感じています。すでに医療機関等を受診しているケースも多く、セカンドオピニオンとして電話相談を利用されることもありますが、病院に限らず紹介できる安全な機関はどこなのかという情報等が圧倒的に不足しており、各機関による積極的な開示が求められています。

新型コロナウイルスが病院機能に影響を及ぼしていることは言うまでもありませんが、専門機関が対応しきれなかった人々からの電話相談が増えており、不安が一気に押し寄せている印象があります。

電話相談のコツとテクニック:対面カウンセリングとの違い

1)電話相談の歴史
電話相談の歴史は1960年代までさかのぼることができます。そもそも対面カウンセリングとはルーツが異なっているようです1)

古来、「相談」は、家族、友人、教師、経験者などの身近な人々の間で日常的に機能していました。また、より大きな器として宗教が「相談」の機能を担ってきた歴史も周知のことです。

近代になり、心理士として専門職業化されたのは、本来、社会が果たしていた「相談」の機能が低下したことや、人々が直面する問題が複雑困難になってきたからでしょう。そのため、日常的なものから専門知識を要するもの、公的機関を紹介すべきものまで多種多様な「相談」が寄せられます。

2)電話相談の特性
対面カウンセリングと異なる電話相談の特性として、

・即時即応性
・匿名性
・一回性
・相談者主導性

が挙げられています2)

電話相談は聴覚優位のツールです。そのため筆者は、「子供を見守って育てる母親」ではなく「家事をしながら離れた場所で遊ぶ子供に声をかけてコミュニケーションをとっている母親」のイメージをより強く持っています。

3)電話相談の実際
相談員は良き隣人でいることが求められます。心理職は中立性を保ち、相談者を尊重して傾聴する基本姿勢を保ちます。相談を受けながら適切に見立てを行います。必要に応じて助言したり、連携したりする場合もあります。

禁忌なども、大抵は通常のカウンセリングに準じています。

電話相談の目標として「相談者自らが問題を解決できる」ことがあります2)。当事者自ら問題を整理し、立ち向かえるようになれば終結です。つまり、電話相談では「利用者の心の健康な部分と協働すること」2)がポイントです。

「心が健康である状態」の指標は、

・他人に相談できる
・何とかしたい、何とかしようとしている
・悩みを抱えながらも日常生活を行っている
・問題を問題として感じている
・人の話が聞ける
・考えようとする
・ユーモアや冗談が通じる
・相談できる家族や友人とのつながりがある
・新しいことに挑戦する勇気や力がある
・適切な機関や他人に援助を求めようとする

などです2)

利用者の心の健康度が高ければより現実的な対応ができ、低ければメンタルヘルスを主眼に対応していきます。

おわりに

2017年に公認心理師法が施行されました。そこでは、「心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供」が業務として定義されています3)

筆者は取得後、特にこの点を意識して相談にあたるようになりました。それぞれの悩みに即応する形で、できるだけ心理的知見などを伝えるように心がけています。電話相談という一期一会の出会いでも、関心を持ってもらえる良い機会だと感じる場面は多々あります。

日本は、これまで物質的に豊かな社会をめざしてきました。しかし、今後は一人ひとりの心の成熟、精神的向上が求められているのでしょう。

感染拡大を食い止められている国や医療崩壊が起きている国など、さまざまな状況が連日報道されています。日本においては、先進医療やワクチン開発に関するポジティブな情報とともに、感染者数から超過死亡までネガティブな情報が伝えられています。

このような状況では、無意識に警戒感が働きます。筆者自らも、人間らしい感情や感覚を失うことなく、判断や方向性を誤ることのないようにと心がけています。

新型コロナウイルスCOVID-19は、各国の国情に打撃を与え、社会不安は増大しています。今後、人々が極端なマイナス思考に陥ったり、憎悪の連鎖が起こったりする可能性も考えられ、対策が求められます。平和維持の願いと未来への希望を持ちつつ、業務にあたっています。

 

参考文献

1)酒井経子.電話相談の歴史とその傾向.電話相談学研.6, 1994.
2)片岡玲子ほか著.子育て電話相談の実際.一般社団法人東京臨床心理士会編.東京,創元社,2013,180p.
3)厚生労働省.公認心理師法概要.2020.https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000116068.pdf.(2020年7月22日閲覧)

 

(文・構成:臨床心理士・公認心理師ライター アマリリス)

 


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