公認心理師制度のいま: 厚生労働省へインタビュー

厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課公認心理師制度推進室の風間 信之室長に公認心理師制度の現状や期待などについてインタビューしました。

公認心理師の資格を生かすには

ー公認心理師の資格が生かせる職場について、医療、福祉(児童福祉)、企業、司法などさまざまあるかと思いますが、各現場のどのようなニーズに対応することを想定されておられますか。

おっしゃるとおり、公認心理師は、さまざまな分野において活躍することが期待されています。例えば、医療分野においては、医療機関での相談業務や心理検査、心理療法など、心理職の立場からの技術提供が挙げられます。

福祉分野のうち、児童福祉施設などにおいては、子どもの発達に関する知識や各種心理検査などの技術をもって、子どもの状態、家族の状況、問題点などを包括的に理解・評価することが必要とされています。

また、産業・労働分野では、労働者に対する相談援助や研修などが求められています。

こうした各分野における心理に関する知識や技術に加えて、対象者の生活全般を視野に入れつつ、多職種連携を調整する役割などが期待されています。

 

ーその職場において、心理職の存在はどのようなプラス面があると思われますか。

心理の専門的な知識を用いて支援を行うことができる専門家が関わることにより、支援が必要な方の課題の理解が円滑に行われることや、支援が必要な方や関係者との信頼関係が築きやすくなることなどが考えられます。

特に、多職種協働による問題解決が求められているなかで、包括的な専門的知識と心理援助のスキルを持つ公認心理師がさまざまな人や職種をつなぐ役割を担うことが期待されています。

例えば、病院においては、心理相談などにより把握した入院患者の性格やコミュニケーションの取り方について、その特徴を医師や看護スタッフに伝えて入院患者との関わり方を助言することや、患者に社会復帰に関する問題があるようであれば精神保健福祉士につなぐことなどが挙げられます。

そのように、ほかの職種の方たちとしっかりとコミュニケーションをとりながら、支援が必要な方の心の理解が支援者全体で共有されることによって、支援体制の土台作りができ、より丁寧な支援につながると考えています。

公認心理師という資格の周知

ー公認心理師の知名度、認知を高めるため、今後どのような取り組みを計画されていますか。

これまでの活動実績により、「カウンセリング」「心理士」などの言葉は世間にもある程度認知されていると考えています。今後は、国家資格として広く認知されていくことが期待されます。

そのためには、関係団体や関係学会などによる支援・普及活動のみでなく、今後輩出される公認心理師の方々が、各分野において求められている役割を自覚して活躍することにより、信頼を得ていくことが重要だと考えています。

また公認心理師の方々が、公認心理師の仕事内容をわかりやすく情報発信することが必要です。

例えば、公認心理師の仕事には、心理支援が必要な方の関係者への心理相談などがあります。悩みを抱えた子どもの保護者に対して、これまでの子育てを受容しつつ、心理的・発達的な面から助言・支援することで、自信を持てずにいた保護者が安心して子どもと関わることができるといったことです。

このような、公認心理師に相談して得られることなどを国民の皆さまに広く知ってもらうことも大切だと思っています。

厚生労働省としても、引き続き関係団体や関係学会のご意見をうかがいながら、公認心理師の活動について支援していきます。

これからの展望

ーこれから公認心理師にどのようなことを期待されますか。
公認心理師の国家資格が定められた背景は、「国民が安心して心理に関する支援を受けられるようにするため」であり、一定の資質や信頼性が期待されています。これまでのように、引き続き、自己研鑽やスキルの向上に励むこと、ほかの職種の方たちとしっかりとコミュニケーションをとって問題解決にあたることを心がけていただきたいと思います。

また、昨今の社会の状況を踏まえれば、公認心理師による専門知識を活用した支援は、医療、福祉、産業、司法などのさまざまな分野で必要とされています。

こうしたなかで、公認心理師の方々ご自身でも、自らの仕事が国民の皆さまにとってどのような意味を持つのか、良いもの、役立つものになっているのかということを日々考えながら活動していただきたいと思います。

例えば、公認心理師の仕事には、心理支援が必要な方に対する心理相談などもありますが、日々のストレスが重なってマイナスに考えがちになってしまったとき、公認心理師に相談することで考えが整理され、気持ちが少し落ち着いてくることがあります。

このように、実は公認心理師というのは誰にとっても身近な存在なのです。そのため、公認心理師の方々には、公認心理師として国民の皆さまに何ができるのかを常に考えていただきたいと考えます。

そして、公認心理師の制度は令和元年に第2回の試験を行うという、まさに始まったばかりの制度であり、よく知らない方も多くおられるため、公認心理師とは何なのか・何ができるのか、情報発信を積極的に行い、広く知ってもらうことが何よりも大切です。

そのような活動を地道に繰り返すなかで、公認心理師が信頼され、今よりもさらに国民の皆さまの心の安心が得られることを期待しています。 

 

(厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課公認心理師制度推進室 風間 信之)


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