労働衛生機関の保健師活動の魅力|産業保健の現場から

 

本連載では、産業保健の現場で働く保健師の皆さんのこれまでの歩みとともに、産業領域における看護師・保健師の役割ややりがい、実際を紹介いただきます。


公益財団法人 東京都予防医学協会
健康増進部 保健師
加藤京子

企業で働く保健師を目指した理由

筆者の母と二人の叔母は看護師です。看護師に囲まれて育った筆者は看護大学を卒業後、循環器内科・胸部外科混合病棟で看護師として働き始めました。少しずつ看護業務もできるようになり、5年目にはスタッフの中心となって、入院患者の退院後の生活指導を行っていました。

そんなとき、心筋梗塞でバイパス手術をした30代の患者さんに生活指導を行う機会がありました。

「この若さでどうしてこんな病気になるのだろう。退院後の生活や仕事はどうするのだろう」

そう思ったことがきっかけとなり、病気になる前に役に立てる仕事がしたいと、企業(事業所)の健康管理室への就職を決めました。

病院で働く看護師の仕事と異なる点

企業(事業所)では、健康診断受診後の事後措置や、長時間労働者の面接フォロー、復職支援などを行っていました。しかし、病院で働いていた筆者にとって、元気に働いている方を対象とした保健相談や保健指導は慣れるまで苦労しました。

あるとき、喘息の方が面談に来られたので、良かれと思い、丁寧に指導しました。ですが、その方はうなずくだけで帰ってしまいました。指導を終えた後、一方的に話してしまったという後味の悪さを感じました。指導したつもりとなっていたのではないか、どうしたら良かったのだろうか……と。

病院にいる患者さんは、病気の治療をしています。治療後も、指導された生活を守らないと、生命の危機に関わります。

企業にいる従業員は、元気に働いている方々です。仮に病気を持っていても、その方は、置かれている環境で生活を維持するために働いているのです。看護職が必要と思う指導が、そのとき、その方にとって最優先であるとは限りません。

病院で働く看護師の仕事と大きく異なるのは、対象が元気な人であり、従業員の置かれている生活全体を見て支援することだと思います。

入職して苦労したこと

保健指導で苦労していたころ、先輩から、「警察沙汰になること以外は何でも試すほうがよい」とアドバイスを受けました。

そこで、まずは面談に来られた方に指導していることを自分で実践してみました。具体的には、「野菜を1日に350gを食べる」「体重を毎日測定する」などです。実際にチャレンジしてみると、習慣になっていないとこれらが本当に大変であることが分かりました。

自分自身の体験を指導に活かすようになってから、対象者も親しみをもって受け入れてくれるようになりました。うまくいかないと感じていた指導に、少しずつ自信が持てるようになったのもこのころです。

指導者である前に、「自分自身が学ぶ」姿勢が大切なのだなと思いました。

今となっては、大切なことを先輩が教えてくれたと思っています。課題を感じたとき、プロが身近にいればそのアドバイスに耳を傾ける、プロの仕事をまねる。そういったことが課題克服への近道ではないでしょうか。

保健師として企業で働く魅力とは

「病気になる前に役に立てる仕事がしたい」思いから、産業保健師となってあっという間の17年間でした。今では、保健指導も含む企業の健康管理だけではなく、自組織の職員の健康管理も行っています。

他部門と協働し新規事業に取り組んだり、後輩を育成したりなど、業務は多岐にわたり、やりがいを感じています。

労働衛生機関に所属していますが、労働衛生機関で働く魅力は、やはり、対象が多数で、かつ広範囲に多様な働き方があるため、多くの人と関わることができることです。

一方、広範囲のため、活動場所や活動内容、アプローチ方法が多種多様で、成果を目に見える形にするのは特に難しいことが多いです。ですが、成果をお客様である企業の衛生管理者やその従業員、自組織の経営層などにもわかる形で示すことによって、産業保健活動や産業保健師のあるべき姿をより一層意識するようになったと思います。

対象が多く幅広いため、関わる自組織の仲間もかなりの人数となります。自組織には約350名の事務職や専門職がいますが、これらの仲間と事業を共に成し遂げることができたときの喜びはかけがえのないものです。

これは、事業所や健康保険組合でも同じだと思います。仲間と協働して仕事するために保健師に必要なのは、まずは一企業人として自組織で期待されている役割を認識し実行することです。その上で、自分自身の活動を形にすることが重要です。そういった積み重ねが、さらなる健康支援活動につながっていくのだと思います。

 

~略 歴~
1995年    循環器内科・胸部外科混合病棟にて勤務
2004年6月 公益財団法人 東京都予防医学協会保健師として入職 現在に至る

 


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