公認心理師の現状とこれから:厚生労働省へインタビュー
公認心理師制度の現状などについて、厚生労働省の公認心理師制度推進室長の風間信之さんにインタビューしました。
公認心理師の資格のいま
― 第2回公認心理師試験が終了し、第1回試験と合わせて合格者は36,438名となりました。現任者の方の受験区分では臨床心理士以外の方も多く受験されていますが、多職種の方の受験についてはどのように感じていますか。
現任者の方の受験区分については、特定の職種が受験資格として認められているのではなく、5年以上、心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うなど、公認心理師法第2条第1号から第3号に定められている行為を行うことを業とする方、または業としていた方が該当します。
公認心理師は、心理学の専門的な知識やスキルをもって、支援を要する方の心に寄り添って丁寧にかかわり支援する職種です。公認心理師の資格取得はスタートであり、現場に出て、相談等の心理支援を繰り返す中で、支援の質を向上していくことが必要です。そのためには公認心理師の責務や役割を自覚して、各分野での自己研鑽が求められるものと考えています。これまでの心理に関わる経験を生かし、ぜひご活躍いただきたいと思います。
― 資格取得者のキャリアアップのサポートの施策などは予定されていますか。
医療・福祉・教育・司法・産業等のさまざまな分野での活躍が期待され、もちろんキャリアアップは大切と考えています。公認心理師は2019年9月に第2回の合格発表があったばかりの資格ですので、厚生労働省としては、まずは職務状況などの現状を把握する必要性を感じています。今の状況を把握した上で、公認心理師の養成や資質向上等の研修について、必要性等を含めて検討したいと考えています。
公認心理師の方々がキャリアアップをする中で、人によっては未経験の領域に携わることもあるかと思いますが、公認心理師は各分野に対応できる資格として国家資格化されたものです。今後、さまざまな分野でその力を発揮されることを期待しています。
また、管理職や指導者にキャリアアップをし、これまでに得た知識や経験を若手の心理職の方に還元していただくことも非常に重要です。例えばスーパービジョンを行うなど、人を指導する立場になってあらためて自身の心理支援を見直す機会となり、スキルアップできることもあるのではないでしょうか。このようなことも期待される形の一つかと思います。
― 公認心理師の一般的な知名度は、今後どのようにすれば浸透していくでしょうか?
今後、国民の皆様に広く知っていただくためには、関係団体や関係学会等による支援・普及活動のみでなく、公認心理師自身によるわかりやすい情報発信やそれぞれの職場で信頼を得ることが大切だと考えます。
また、「こころJOB」のようなインターネットメディアをうまく使って公認心理師の情報を発信していただくことも効果的だと考えています。
厚生労働省としても、引き続き関係団体や関係学会等のご意見を伺いながら、どのように浸透させていくか検討していきます。
― 今後、公認心理師の活躍が期待される分野は?
さまざまな分野で公認心理師のニーズはあると感じています。まずは、職務実態を把握した上で、例えば、ニーズがあるのに配置できていない状況がある場合、そこには制度上の問題があるのかなど、公認心理師制度を推進していく上での検討をしていきたいと考えています。
なお、いくつかの分野では制度変更も実現しています。例えば、スクールカウンセラーや企業のストレスチェックの実施者に公認心理師が加わりました。今後も、社会のニーズに応じ、公認心理師が活躍できるように公認心理師制度を推進していきます。
―「こころJOB」では心理職の人材紹介サービスを行っています。営業活動を通して産業分野でのニーズの高まりが感じられます。産業分野でのメンタルヘルスに公認心理師はどのように寄与できますか。
今や「メンタルヘルス」という言葉は当たり前のように使われています。実際、職場のメンタルヘルスは重要な課題です。公認心理師はストレスチェック実施者に加わったことからも、産業分野での活躍が期待されています。
公認心理師は心理に関する支援を行う者として、ストレスやメンタルヘルスの専門的な知識、そして技能を兼ね備えることが求められます。その上で、精神疾患やメンタルヘルス、対人コミュニケーションなどの知識を公認心理師の力で職場の方に広く伝えていただくことは、問題を未然に防ぐことや、職場での良い関係づくりにもつながります。
ぜひその専門性を発揮して、職場で働く一人ひとりが自分の心の健康を日ごろから意識し、ストレスに対処できるようになるために力を尽くしていただきたいと考えています。
また、復職支援にも公認心理師の寄与を期待しています。精神疾患で休職となった場合、復職してもすぐに負荷のかかる仕事を行うというわけにもいきません。職場復帰にあたっては、自分の症状を学んだり、休職に至った経緯を振り返ったり、ストレスの対処法やコミュニケーションスキルを身につけたり、さまざまなステップがあります。このような支援に公認心理師のスキルが貢献できるだろうと思います。
今後、産業分野のみならず、公認心理師の方々がご活躍され、今よりもさらに国民の皆さまの心の安心が得られることを期待しています。
インタビューさせていただいた方
社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 公認心理師制度推進室長 風間信之さん
(インタビュー・文:こころJOB編集室)
あわせて読みたい
『公認心理師制度のいま:厚生労働省へインタビュー』の記事はこちら