【わたしのヒストリー】言葉で伝えることの難しさ

社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院
心理室 臨床心理士
髙橋麻由子

いまの働きかた

現在、急性期の総合病院で臨床心理士として働いています。2017年4月に入職し、2018年の春より2年目となりました。

当院には、私を含め7名の心理士が在籍しています。総合病院であり、精神科のほかに身体疾患に関わる診療科も数多くあります。7名の心理士で11の病棟の入院患者とその家族、外来患者の心理面接や心理検査を行っています。

急性期の病院であることもあり、突然の病気や事故による怪我など、患者やその家族は今まさに不安や戸惑いに直面した状態にあることが多いです。

入院患者と心理面接をする際には、ベッドサイドで話を聞くことや、患者を深く理解するためのツールとして心理検査を用いることもあります。心理検査の結果は、患者本人の困っていることや心配事を聞き、生活歴などの情報とも合わせて検討する必要があります。

心理職を目指した理由

私が進路を真剣に考えたのは、大学3年生のころでした。高校生のときにはテニス部の活動に夢中で、将来の夢も特になく、何を基準に大学や学部を選べばよいのかわかりませんでした。漠然としたまま学校を選び、進学していくことに少し不安を感じていたように思います。

やりたいことがわからなかった私は、ドラマなどで興味があった医療系の大学を選択し、そのなかでも幅広く学ぶことができそうな学部を選択しました。

医療系の大学では、ほとんどの学生はそれぞれの資格取得を目指して目的の学部に入学し、勉強します。しかし私は、特に目的とする資格もないまま入学したため、最初に「私は何を学び、どんな専門家になることができるのか」という疑問と不安にぶつかりました。

そのようなとき、学生同士でチーム医療を体験する実習がありました。そこで、患者にチームで関わることのメリットを実感し、この実習を通して、自分も専門家としてチームの一員として患者に関わりたいと思うようになりました。そして、幸運にも幅広く学んでいたなかに精神保健学の講義があり、自分の希望する働きかたに近づくことができると考えたため、心理職を目指すことにしました。

実際になってみて

まず、これほどたくさんの人が精神的な問題を抱えており、生きづらい思いをしているということに衝撃を受けました。これまで自分が生きてきた世界では目にすることのなかったような体験をし、傷ついた患者を目の前にして、その患者のつらさを想像することすらとても難しく感じ、経験値の少なさを痛感しました。また、身につけなければならない知識がたくさんあり、学生のころよりも勉強の必要性を強く感じるようになりました。

学生のころは勉強の目的を意識することはあまりありませんでしたが、心理士として働きはじめ、患者と向き合うために必要と思われる知識は無限にあるように感じます。

私のなかで、常に苦戦を強いられることは、言葉で伝えることの難しさです。心理面接だけでなく、心理検査の実施・結果を患者や医師などの依頼者に伝える際も、必要なのは言葉です。言葉を用いてやりとりをすることが仕事の大部分を占めているように感じます。

語彙力や文章構成など知識面で苦戦することもありますが、もっとも難しく感じているのは、考えたことや感情を言葉にして表現することです。

これから

心理士としては働きはじめたばかりであり、これから身につけていくべき知識やスキルがたくさんあると感じます。今後の目標の一つとして、自分の専門性を高めていきたいと考えています。

学生のころ、進路を考える際に感じたように、自分がどんな分野に興味・関心があるのかを見つけることは簡単ではないでしょう。まだあいまいであるならば、まずはさまざまな領域について知ることから始めるのが最善ではないかと、大学時代の経験から考えています。

現在の職場は多くの診療科が集まる総合病院であり、先輩心理士も多く在籍しているため、幅広い領域に触れることができる環境にあります。この環境を生かして、まずは自分の興味・関心のある領域を探してみたいと思っています。

心理職に就きたいと思っている学生へ

心理士の仕事は、患者にじっくりと寄り添うことができる、やりがいのある仕事だと思います。仕事に就いてからも、学び続けていく姿勢が求められるため、常に向上心を持つことが大切です。自分の興味・関心がどこにあるのかという感覚を大切にしてほしいです。

また、こころを使う仕事であるため、専門的な知識を身につけていくことに加え、人として豊かな経験を積み重ねていくことも、とても大切だと思います。どのような経験も、自分を豊かにしてくれるものだと思いますので、いろいろなことにチャレンジしてください。

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