【わたしのヒストリー】ライフワークにしたいと思える仕事

社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院
心理室 臨床心理士
鳥海 結

いまの働きかた

総合病院の臨床心理士として、経験豊富な先輩が5人、同期が1人という恵まれた環境で働いています。当院では心理士は精神科所属というわけではなく、病院全体に関わる立ち位置なので、さまざまな患者さんと出会う機会があります。私の場合、たとえば検査なら、低体重で生まれたお子さんの、その後の発達の様子を見る検査から、メモリークリニック(認知症外来)での認知機能検査まで、老若男女幅広い患者さんを担当しています。ケースについても、小児科や精神科外来のほか、腎臓内科の透析導入期の患者さんへの心理的フォローなども担当しています。

心理職をめざした理由

実は、私はもともとメーカー勤務の会社員で、心理職を志していたわけではありませんでした。大学も心理学専攻ではありません。今このサイトを見ている、自分の将来について高い意識を持つ皆さんを前にしてお恥ずかしいのですが、大学のころの私は、自分が何をして働くのかというイメージをあまり持てていませんでした。大学3年生になり就職活動をするなかで、ようやく自分のやりたいことと、仕事をしてお金を稼ぐことの接点を探しはじめました。当時は就職氷河期といわれ、就職活動はかなり厳しかったのですが、そこで気づいたのは、やはり自分の興味のあること、やりたいことでないと、うまくいかないということです。もともと私は健康に興味があり、とくに「予防」に関心があったため、結局縁あって健康関連のメーカーに勤めることになりました。

就職した会社では、ありがたいことに身体の健康についていろいろと勉強する機会に恵まれました。さらに自分でも見聞を広げるうちに、身体の健康と心の健康には深い関わりがあることに気づき、強い興味を持つようになりました。また、広く商品の魅力を伝える自分の仕事は大好きでしたが、一方で目の前の人の健康のために仕事をしてみたいという気持ちも芽生えていきました。臨床心理学というものを知り、職業として惹かれはじめたのはそのころです。メーカーの仕事もとても充実していましたが、「これから一生働き続けたいと思える仕事」ということを考えると、それは臨床心理士の仕事のように思えて仕方なくなっていきました。これまでの生活が大きく変わるので不安もありましたが、会社員として10年働いたころ、ちょうど自分としてこれまでのキャリアがひと段落ついたと思えたので、思い切って会社を辞めて、いちから心理職をめざすために大学院に入学しました。

実際になってみて

心理の仕事ははっきりとした答えがないことも多く、とくに私のような駆け出しの心理士にとっては毎日が暗中模索といった気持ちです。そんな状態ではありますが、「目の前の人に向かいあう」ということはできているかと思います。たとえば検査で短い時間しかお会いできない方であっても、その方の人となりやこれまでの人生を思いつつお会いするので、一つ一つの出会いが濃いものに感じられますし、直接関わらせてもらうことに、とてもやりがいを感じます。総合病院の心理職の業務は多岐にわたるので、さまざまな種類の業務を並行する分、それぞれの分野で熟練していくのはなかなか大変なことだと感じています。しかし同じ職場でこれだけ幅広い経験ができることは少ないと思うので、とても貴重な経験ができていると感じています。

これから

会社員時代から「予防」の大切さについては常に考えていたのですが、今後は心理職もより予防の観点が求められるようになってきていると思います。病院でも、たとえば生活習慣病の患者さんと会うのは、病状がずいぶん進んでからのことが多いのですが、病気が進んでから会う患者さんにどのように向き合うかということと同じくらい、もっと早くから心理職として予防的な関わりを持っていくことも大切なのではないかと考えています。予防の観点からの研究もぜひ行っていきたいと思っています。

心理職に就きたいと思っている学生へ

心理職はとても奥が深いと思うので、駆け出しの私が語るのは本当におこがましいのですが、間違いなくやりがいのある仕事だと思います。自分の心を使わないとできない仕事なので、その分揺さぶられることも多く、自分自身のあり方も常に問われると思います。いろんな迷いも出てくるとは思うのですが、迷うことも含めて、すべて心理職としての糧になっていくのではないでしょうか・・・と、そんな風に思いながら日々修行をしています。心理職に就くまでには、さまざまな実習や試験などがあり大変だと思いますが、身体が資本の仕事でもあるので、自分の身体の声にも耳を傾けつつ頑張ってください。

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