わたしのヒストリー|どんなときも心理職でいられることに感謝して

東北医科薬科大学病院
認知症疾患医療センター がん診療支援チーム
公認心理師/臨床心理士
中間裕美子

いまの働きかた

認知症疾患医療センターの心理支援を担当しています。認知症ケアの相談を受けたり、認知機能のアセスメントの結果から、患者さんとご家族に日頃のケアのポイントをお伝えしたり、困っていることについて、これからどうしたら良いかを一緒に考えています。

認知症は症状が進行すると、忘却したり、自分でできることが少なくなったりします。意思決定のために必要なことをお伝えしたり、自分らしく過ごすためのお手伝いをさせていただいています。

がん診療支援チームでは、医師、看護師、栄養士、薬剤師、理学療法士とともに、がん治療中の患者さんの支援に従事しています。緩和ケアは、心身の苦痛の緩和が重要となるので、タクティール®ケアの依頼を受けています。

認知症の患者さんとがん患者さんへの支援という2つの役割で共通していることは、公認心理師1人の力では心の支援は成立しないということです。患者さんのサポートや問題解決は、公認心理師だけではなく、さまざまな職種が連携しています。

臨床心理士をめざした理由

子どものころ、音楽の先生から「心を表現しなさい」と言われたことが、心について考えたきっかけでした。音楽に込められた苦悩に触れたとき、ちょうど臨床心理士という資格ができるという新聞記事を読み、苦悩に寄り添う仕事を志しました。

大学では臨床心理学を専攻しました。筋ジストロフィーの子どもたちのベッドスクールで一緒に遊ぶ活動に参加していたとき、子どもたちが胸の内を話してくれました。別れと喪失を繰り返す中での言葉に、私は無念でたまらず、無力感でいっぱいでした。このことは、人の心に寄り添うとは何かという問いの始まりでもありました。

在学中のことですが、私の家族ががんの療養中、先が見えない体験をしたことがきっかけとなり、がんの心理ケアを学ぶために他大学に編入学しました。

卒業後は児童相談所の心理職として働きながら、大学院で心理臨床のトレーニングを積み、研究をしました。

学生時代の6年間、心理学を専攻しましたが、今振り返ってみると、当時はさまざまな体験をしたと思います。そのことは、点と点が線で繋がっているように感じます。

実際になってみて

大学院修了後、心療内科で働きました。心理検査とカウンセリングが主な役割でした。心身症の方の心電図の所見からもアセスメントすることがありました。これは、体の症状に隠れているものは何か?ということをデータからアセスメントする必要があるからです。認知症ケア、緩和ケアの際は、人手不足の問題もあり、歯がゆい思いもしました。

母校の大学に戻り、自死予防の研究や臨床心理学の講義を担当したり、学生相談の仕事をしたりしていました。エビデンスから結論を出す作業の繰り返しでしたが、これは大切なことです。心理学の研究発表や講義の言葉は、根拠を踏まえないと、人の心を揺さぶり、惑わせるリスクがあるからです。

家族の介護のために関西へ転居して、病院で画像診断と認知機能評価の修行をしました。職場は臨床心理士が多く在職していて、技術の習得と研究の環境も整っていました。

そこでは認知症ケアの学びもありました。認知症の療養病棟で過ごす方のために、スタッフは家族のように温かく寄り添い、スタッフ総出で最期を見送ることもありました。そして神谷美恵子先生の著作の言葉と出会い、人の心に寄り添うとはどんなことなのかということについて、答えが見つかりました。

わが子がNICUに入院したときのことです。退院支援期まで母子ともに支援プログラムのサポートを受けることになり、病院の都合で私はがん治療の病室で過ごしました。同室の患者さんたちは、ご自身の状態や思いを話してくれました。1日のプログラムを終えて病室に戻ると、同室の人たちが励ましてくれたり、眠れない夜はみんなで話をして過ごしたりしました。もしここに臨床心理士がいてくれたらという思いを持ちながら、職場に復帰しました。日本緩和医療学会の緩和ケア研修会に参加をして指導を受けました。

そして東日本大震災により、身内が被災し、思いきって帰郷しました。

心理職も1人の人間です。子育てや介護の事情も抱えます。震災を避けることもできません。どんなときも心理職でいられることに感謝しています。

これからの展望・希望

震災で臨床観が変化する中、タクティール®ケアの指導をしている先生との出会いがあり、認定資格を取りました。始めてみると、タクティール®ケアの持つ力に気付くことが多いです。いじめ防止、アンガーマネジメントなど、いろいろな場面でも生かしていきたいと考えています。

公認心理師の時代が到来しますが、心理職はどんなときも心の砦(とりで)を見つめる役割があること、また、人と人との対話が心を支えることは不変だと思います。

心理職に就きたいと思っている学生へ

心の琴線に触れる体験は、学びを支える力です。自分の心の彩りを豊かにする経験を重ねて、五感と感受性を磨くことを勧めます。時には学生相談室のカウンセラーに相談して、自分と向き合い、自分を客観的に見つめて、謙虚に振り返ることも、貴重な経験になると思います。

曇りのない目で人の心を見ようとする姿勢は、心理職の力を必要とする人の心に誠実に応えるものです。澄んだまなざしで自分と相手の心を見つめること、俯瞰する目を持つことは、学びの助けになると思います。

1週間のスケジュール

月曜日~金曜日は勤務
土曜日・日曜日は休日
 

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