心理職と診療報酬

はじめに

心理職の皆さん、また、心理職を目指している皆さんこんにちは。近年はさまざまな領域で心理職の方が活躍されていますね。かく言う私も、これまで教育、産業、医療と心理職のメインフィールドで実戦経験を積んでまいりました。そして現在は、単科の精神科病院に勤務しています。

多くの心理職の方が医療機関で活躍されていることかと思いますが、皆さん(特に医療機関に携わる心理職の方)は、私たち心理職が算定できる診療報酬についてどの程度関心を持っておられますか? 毎日のように医師から依頼される検査が、どのくらいの報酬になるかご存知でしょうか?

今回は、医療機関で働く上では考えておきたい心理職における診療報酬についてまとめていきたいと思います。

心理職を取り巻く診療報酬の現状

心理職関連の診療報酬の種類をざっくりと挙げていきます。

 

臨床心理・神経心理検査

心理職が最も診療報酬に貢献できる項目が心理検査です。発達検査や人格検査はもちろん、認知症関連の検査も実施することができます。近年は発達障害や認知症の支援ニーズが高まっていることから、心理検査は重要なアセスメントツールとして活用されています。

以下に、診療報酬算定できる心理検査の一例を挙げておきます。診療報酬の計算方法は1点=10円であり、80点の検査の場合は800円となります。

心理検査診療点数(一例) 操作が容易なもの(80点) 操作が複雑なもの(280点) 操作と処理が極めて複雑なもの(450点)
発達及び知能検査(D283) DAMグッドイナフ人物画知能検査、コース立方体組み合わせテスト、JART知的機能簡易評価など 田中ビネー知能検査、新版K式発達検査など ウェクスラー検査(WISC-Ⅲ/Ⅳ知能検査、WAIS-Ⅲ/Ⅳ成人知能検査)など
人格検査(D284) TEG、Y-G矢田部ギルフォード性格検査、モーズレイ性格検査(MPI)など バウムテスト、MMPI、16P-F性格検査(PFスタディ)、SCTなど ロールシャッハテスト、TAT絵画統覚検査など
認知機能検査その他の心理検査(D285) CES-Dうつ病(抑うつ状態)自己評価尺度、STAI状態・特性不安検査、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、MMSE、AQ(自閉症スペクトラム指数)日本語版など 三宅式記銘力検査、ベントン視覚記銘検査など K-ABC、標準高次視知覚検査(VPTA)、WAB失語症検査、ウェクスラー記憶検査(WMS-R)など

 

小児特定疾患カウンセリング料←NEW!:200点(医師の場合:月の1回目500点、月の2回目400点)

令和2年度から新しく導入された、待望(?)の心理職が算定できる保険適用のカウンセリングになります。

対象は、発達障害や登校拒否、虐待の疑いがあるなどの小児になります。20分以上の実施で算定できますが、電話でのカウンセリングは不可になります。また、2年を限度として月2回までの実施に限り算定となります。

 

その他:ギャンブル依存に対する治療の評価や精神科外来における多種職相談支援等

こちらは、基本的に医師、看護師、精神保健福祉士がメインになりますが、「多種職連携支援の中に公認心理師も含めていいですよ」といったくらいのものなので、頭の隅っこで憶えておく程度で大丈夫です。

 

番外編:認知療法・認知行動療法

こちらは、医師あるいは医師および看護師が共同で実施した場合に算定できます。心理職が含まれていないのが残念ですが、私たちにも馴染みが深いものなので記載しておきます。

経営の面から心理職について考える

今や心療内科や精神科の看板を掲げている医療機関で心理職を置いていない病院はほとんどないかと思います。間違いなく、医療機関側にとっても患者さん側にとっても心理職のニーズがあることは確かでしょう。ただ、病院運営の面から考えると、現状、心理検査でしか診療報酬を算定できない(=稼ぎが少ない) 心理職は、多くの医療機関にとって赤字覚悟で雇っている場合が多いことは知っておきましょう。

では、病院の経営者側がどのような心理士(師)を求めているのでしょうか。私はこれまで、いくつかの外来クリニックや有床の精神科病院に勤めており、一時は心理職の採用に携わることもありました。そういった経験上、経営者側としては、心理検査の経験値が一つの判定基準にあると思われました。もちろん、人柄や常識的な態度が身に付いていることが前提であり、病院の方針もさまざまですので一概には言えませんが、診療報酬面も考えて動ける心理職は経営者側としてもありがたいようです。

 

診療報酬算定の仕組み

心理職が単独で取れる診療報酬は実質、心理検査と小児カウンセリングです。ただ、小児カウンセリングは対象が限られており、子どもを診ない病院では算出されませんので、多くの病院では心理検査の報酬がメインになります。

診療報酬上、心理検査は発達及び知能(D283)、人格(D284)、認知機能・その他(D285)の3種類に分かれています。この3種類から1人の患者につき1日1件ずつ、診療報酬を加算できます。例えば、WAIS-Ⅳ、Y-G性格検査、AQであれば、3種類すべてから診療報酬を算定できます。

では、知能、認知に併せて人格検査に質問紙と投映法が組み合わされている場合を考えます。WAIS-Ⅳ、TEG、バウムテスト、AQのオーダーを例に考えていきましょう。この場合、WAIS-ⅣとAQは通常通り算定できますが、人格検査はTEGかバウムテストのどちらかしか算定できなくなります。せっかく取ったのに報酬が発生しないなんてもったいないですよね。このようなときに漏れなく診療報酬を取りたい場合は、検査を2日に分けて実施するしかありません。1日目にWAIS-ⅣとTEG、2日目にバウムテストとAQに分ければ、

1日目:450点+80点=530点、2日目:280点+80点=360点

を算定できます。

このように、1日で終わらないテストバッテリーを組む際には、診療報酬の面も気を配ってスケジューリングしてみてもよいのではないでしょうか。

これから医療機関での実践を希望する若手心理士の方へ

今回は心理職と診療報酬を題材に、心理職を取り巻くお金に関わる現状を中心にまとめました。世知辛い話で嫌になるかもしれません。しかし、一人の社会人として組織の中で働く以上、目に見える形で組織に貢献していくことも考えていく必要があると思います。

私たちが常にそうしてきたように、目の前の患者さんのために何ができるか考え続けることは大切です。ただそれだけでなく、社会人として給料をもらって働いている以上、会社(雇用先)にも貢献していく視点を持つことも必要でしょう。

診療報酬について考えることが、心理職としていかに貢献していくかを考える一つのきっかけになることを願っています。

 

(文・構成/臨床心理士 公認心理師 葛西修司)


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