【わたしのヒストリー】「チームで患者を支援する」

社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院
心理室 臨床心理士
牛山幸世

いまの働きかた

現在、急性期総合病院で常勤職として、週5日(土日祝休)働いています。

当院では、心理士として患者と関わる多くの仕事があります。一般的に思い浮かぶのは、精神科や小児科外来へ通院する患者の心理面接や心理・発達検査、神経内科での認知機能検査などかと思います。しかし、当院の心理士の業務は、前述の面接・検査だけでなく、身体疾患のため入院中に不安になる患者への心理面接、突然の病気や事故で動揺が激しい本人・家族やがん患者への心理的サポート、妊娠中・出産後の妊産婦へのメンタルケアなどさまざまです。また、リエゾンチーム(精神医療と身体医療をつなぐチームのこと)、緩和ケアチーム、認知症ケアチームの一員として、回診やカンファレンスにも参加しています。

私自身は、認知症ケアチームのメンバーとして、週1回の回診とカンファレンスに参加しています。このチームは、医師(神経内科、精神科)、看護師、理学療法士、薬剤師、社会福祉士などで構成されています。認知症と診断されている、もしくは認知機能が低下した患者が不安なく入院生活を送れるよう、また入院生活中に認知機能が下がらないように支援を行っています。

たとえば、入院していることがわからず、自宅へ帰りたいという気持ちが高まり、不安を訴える患者がいます。対応としては、今いる場所を繰り返し伝えたり、紙に書いたりして今いる場所を認識してもらいます。家で使用している時計やカレンダー、家族が写っている写真などを家族に持ってきてもらうこともあります。また、自宅や施設でどのように過ごしているか、趣味や好きなことなどを家族に聞き、安心して入院生活を送れるようにサポートしています。

もし、自分がどこにいるのかわからなくなり、周りにいるのが知らない人ばかりだったら……と想像すると、誰もが不安になると思います。医療者が「ここは病院ですよ」と伝えても、言われたことを忘れてしまう場合もあるでしょう。環境の変化による患者や家族の不安が少しでもなくなるように、心理士として患者や家族に関わっています。

心理職をめざした理由

もともとは、大学の商学部を卒業し、一般企業の総合職として約10年間勤務していました。働いている間、精神的な問題で休職する人や、こころの病気になる友人がいました。特に同僚とは週5日、机を並べて一緒に働いていたのに、状態の変化に気付けませんでした。そのとき、「自分に何かできなかったのだろうか」と思ったことが心理職をめざしたきっかけでした。

思い返してみると、成人するまで人のこころについて考えたことがあまりありませんでした。「こころの病気になった人と、どのように話せばよいのだろう」と悩み調べていたとき、心理学という学問と、臨床心理士という仕事を知りました。

大学を卒業してからかなりの年月が経っていたため、若い人達と一緒に勉強ができるのかという不安もありましたが、勇気を振り絞って大学院へ入学・修了し、現在に至っています。

実際になってみて

心理士が病棟へ行き、患者とベットサイドで心理面接をしたり、チームのメンバーとして他職種と一緒に働いたりすることは、大学院の授業では習いませんでした。総合病院で働く前は大学の学生相談室で働いていたので、面接室で患者と1対1で心理面接をすることがほとんどでした。そのため私自身、「心理士の仕事=面接室で患者と1対1でカウンセリング」というイメージが強かったと思います。

実際に総合病院で働いてみると、ほかの医療スタッフと関わりながら患者を支援していく機会が多く、驚きました。

心理職に就きたいと思っている学生へ

2018(平成30)年9月に第1回公認心理師試験がありました。国家資格となることで、今まで以上に仕事の幅が広がることが期待されています。

これまで実際に働いてきて、1対1の面接や心理検査だけでなく、チームで患者に関わること、動揺している家族を支援すること、コミュニケーション方法やストレスの知識などの研修会を開催することなど、業務内容の幅広さを感じています。

「心理職の仕事って、面接や検査だけではないんだ……」と驚かれるかもしれませんが、人に興味がある、人と関わりたいという気持ちがあれば始められる学問でもありますし、奥深い職業の一つだと思います。

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