緘黙|心理士が選ぶ!公認心理師試験で押さえておきたいキーワード
- 2022-6-6
- 国家試験対策
緘黙
緘黙は、言語能力があるにもかかわらず、全く話さない「全緘黙」と、特定の場で話さない「選択性緘黙」(場面緘黙)があります。選択性緘黙は、家庭など安心できる場所では話せるのに学校や職場では話せなくなる症状で、DSM-5の診断基準では不安症群/不安障害群の一つに分類されています。
原因は解明されていませんが、遺伝的な行動抑制的な気質に加えて、環境からの負荷がかかることがきっかけになることが多いといわれています。たとえば就園時に不安、緊張が高まり、それを解消するために話すことを避け、そのうちその対処行動が固定化されていくケースは多くあります。転校したり、いじめを受けたりしたことがきっかけになるケースもあります。なお、話をしないという状態は同じであっても、脳の言語中枢が損傷を受け、言語を操る能力に障害が残った状態は失語症といい、緘黙とは異なります。
吃音との合併や、ASD、対人不安、知的障害、不安症状の併存が多く、状態像は多様です。声が出ないだけではなく、「緘動」と呼ばれる強い行動抑制が併存することもあります。不安や緊張が強くて身体が固まるタイプと、体の力が入らないタイプに分けられます。
緘黙は、放っておいたり、反対に話すことを強制したりするのではなく、安心できる人や場所を考えて環境を調整し、かかわり方の工夫によって一人ひとりに合った対応を考えて改善を図ることが大切です。徐々に話せる場面を増やすスモールステップ、段階的なエクスポージャー、言語聴覚士による支援や、認知行動療法などが有効です。他の不安症が合併している場合には抗うつ薬などの薬物療法を行う場合もあります。
予想問題を解いてみよう!
緘黙について、誤っているものを2つ選択せよ。
①緘黙は人見知りが強い性格と、育て方が原因で起こる。
②話したいと思ったら話すようになるので、本人のタイミングを待つべきである。
③緘黙には緘動を伴うことがある。
④緘黙は発達障害者支援法では発達障害に分類され、特別支援教育の対象となる。
⑤選択性緘黙はDSM-5において、パニック症、分離不安症といった不安症群の一つに分類されている。
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正答:①➁
①× 育て方が原因ではない。
②× 話せるようになるためには、段階的に話せる場面を増やすなど支援の工夫が必要である。発話状況や不安の程度、身体的緊張等のアセスメントを行い、行動療法といった支援の計画が有効となる場合が多い。
③〇
④〇 緘黙は発達障害者支援法の支援対象に含まれている。そのため発達障害が併存していなくても、発達障害者支援法の支援を受けることができる。
⑤〇 「他の状況で話をしているにもかかわらず、話すことが期待される特定の社会的状況において、話すことが一貫してできない」1)ことが明記されている。
【引用・参考文献】
1)DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引.日本精神神経学会(日本語版用語監修).髙橋三郎・大野 裕(監訳).東京,医学書院,2014,448p.
2)金原洋治ほか. イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド;アセスメントと早期対応のための50の指針. 東京, 合同出版, 2020, 14・27・31.
3)園山繁樹.幼稚園や学校で話せない子どものための場面緘黙入門. 東京, 学苑社,2022, 174p.
(文・構成/公認心理師 本原 圭)
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