物質依存(substance dependence)と行動嗜癖(behavioral addiction)|心理士が選ぶ!公認心理師試験で押さえておきたいトレンドキーワード

物質依存(substance dependence)と行動嗜癖(behavioral addiction)

物質依存とは、覚せい剤やアルコール、ニコチンなどの物質(薬物)を反復使用した結果、それらの使用を減らしたり、止めたりすることができなくなった状態のことをいいます。物質依存の概念は科学的に検証されており、そのメカニズムには、脳内報酬系と呼ばれる脳の神経系が関与しています。また、「渇望(依存対象への強烈な欲求)」や「コントロール障害(減らそう、止めようと思ってもできない)」「禁断症状・離脱症候・退薬症候(減らしたり、止めたりすると生じる不快な症状)」「耐性(以前より大量に使用しないと、以前と同様の効果が得られなくなる)」など特有の症状を有します。

「行動嗜癖」とは、ギャンブルやゲーム、インターネット、買い物、性的行動などといった行動が対象となり、科学的な検証が不十分な経験的概念です。しかし、世間一般的には「物質依存」と「行動嗜癖」の区別はされておらず、どちらも「依存」と呼ばれています。理論や立場によっては、「行動嗜癖」は、「行為嗜癖」や「プロセス嗜癖」とも呼ばれることもあります。なお、「行動嗜癖」を「アディクション」とそのままカタカナ表記で使用することも多くあります。

今日では科学的な検証が進んだことも影響し、ギャンブルはDSM-5でギャンブル障害として、ゲームはICD-11でゲーム障害として、それぞれ物質依存と同じカテゴリーに分類されました。

予想問題を解いてみよう!

問題:物質依存(substance dependence)と行動嗜癖(behavioral addiction)について、誤っているものを1つ選べ。
①物質依存のメカニズムには、脳内報酬系の関与が指摘されている。
②物質依存の特有な症状として、「渇望」や「コントロール障害」「耐性」 などがある。
③覚せい剤やアルコールなどの物質への依存は、科学的に検証されてきた概念である。
④経験的な概念(行動嗜癖)であるギャンブルとゲームは、科学的な検証がいまだ行われていない。
 

解答を見る

正答:④
①快感や多幸感をつかさどる神経系(脳内報酬系)の変化が関与しているとされる。
②物質依存には、「渇望」や「コントロール障害」「禁断症状・離脱症候・退薬症候」「耐性」など特有の症状が生じる。
③覚せい剤やアルコール、ニコチンなどの物質への依存は、科学的に検証されてきた概念である。
④科学的な検証が進んだことも影響し、ギャンブルはDSM-5ではギャンブル障害として、ゲームはICD-11でゲーム障害として、それぞれ物質依存と同じカテゴリーに分類された。

 
【参考文献】
1)廣中直行.”コラム1 依存・嗜癖をめぐる用語と概念 ”.アディクションサイエンス:依存・嗜癖の科学.宮田久嗣・高田孝二・池田和隆・廣中直行編著.東京,朝倉書店,2019,49-51.
2)樋口進編著.現代社会の新しい依存症がわかる本:物質依存から行動嗜癖まで.東京,日本医事新報社,2018,256p.
 
(文・構成/臨床心理士・公認心理師 阿相周一)
 
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