【Report】日本心理臨床学会 第37回大会

一般公開プログラム「公認心理師養成における卒前・卒後教育の課題」

本シンポジウムでは、公認心理師を養成する大学・大学院での教育や実習における現状の課題を共有し、今後の公認心理師資格について議論が交わされた。司会を務めたのは奥村茉莉子先生(日本心理臨床学会資格関連委員会委員長)。

はじめに登壇した藤城有美子先生(駒沢女子大学/前カリキュラム委員会委員長)は、公認心理師のなすべき仕事を高い水準で遂行できる人を育成するためには卒前・卒後の教育が重要だとし、卒前教育においては現場での実習が、卒後教育においては職場でのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や職場外での研修・訓練が鍵だと述べた。大学では、単なる専門職の養成機関ではなく人間性を育む場としての役割も必要だとし、大学院でも学部で得た知識を講義・演習・実習の場で循環させることが大切だと述べた。また、大学の心理学を専攻している学生には、公認心理師をめざす人とそれ以外の両方がいるため、たとえば心理検査をどこまで教えるのか、実習ではどこまでの場を提供すればよいのかなど、検討すべき事項が示された。

宮﨑 昭先生(立正大学/前資格関連委員会委員長)は、「心理職におけるエビデンスに基づく実践」と題し、心理支援においてQMS(品質マネジメントシステム)の考えかたが必要ではないかと提言した。心理臨床の場ではさまざまな理論に基づいた支援が実践されるが、クライアントへの介入結果をきちんと評価し、PDCAサイクルを回すことが今後の公認心理師の役割として大切だという。これから大学・大学院を卒業して公認心理師となる学生は、専門知識はあるが臨床での経験年数は積んでいない。長年の実践経験がある現任者ルートで公認心理師となった人とのスキルの差を埋めるためにもQMSを用いて改善を重ねていくことが卒後、必要だと述べた。

花村温子先生(埼玉メディカルセンター)は病院実習を受け入れる立場から、現在行っている実習の実際を紹介し、病院実習における課題について述べた。実習生を受け入れるにあたり医師や事務をはじめ各方面との調整、手続きが必要なこと、引き受け手の時間的拘束などの負担、実習の到達目標が不明確で現場に任されている現状、大学と現場の意見交換の場の未整備を、課題として挙げた。また、実習で技能を学ぶだけでなく、先輩心理職の働き方から心理職としての姿勢を学んでほしいこと、そして「自分はどんな心理職として働きたいのか」「この領域は自分に向いているのか」など、自分を知ることを実習教育内で支援していきたいと述べた。今後は、公認心理師のキャリアラダーを作成し、それに沿った卒後教育を行う必要性にも言及した。

最後に鶴 光代先生(東京福祉大学)から、まず公認心理師の養成を行う大学・大学院などによって設立された公認心理師養成機関連盟の紹介があった。連盟を発展させていくためには、さまざまな団体との横のつながりの強化や、公認心理師養成に関わる研修会の充実が必要だとした。そして、公認心理師がストレスチェック実施者へ追加された件など、公認心理師という国家資格ができたことにより制度や法令が更新されていく現状についても報告があった。また、公認心理師資格の取得後における、さらなる専門公認心理師資格について、まずは主たる5分野として挙げられている諸領域ごとに、専門総合公認心理師、専門保健医療公認心理師、専門福祉公認心理師、専門教育公認心理師、専門司法・犯罪公認心理師、専門産業・労働公認心理師の創設検討が述べられ、本シンポジウムは締めくくられた。

(取材・構成:こころJOB編集室)


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