わたしのヒストリー|DV加害者更生プログラムを通して人を支える

NPO法人こころサポート リエゾンちょうふ
代表
中島由子

DV加害者更生プログラムとは

学生の皆さんはDVと聞くと、何を思い浮かべますか?

家庭内で行われるパートナーに対する暴力を「ドメスティック・バイオレンス(domestic violence)」、すなわちDVといいます。

暴力といっても身体的な暴力だけではありません。今、世間を騒がせているパワハラ、モラハラなども精神・心理的な暴力です。ほかに、性的な暴力と経済的な暴力もあります。

筆者は、DVの加害者に交流分析を用いた更生プログラムを提供しています。暴力で人を支配するのではなく、パートナーに対して対等で尊重し合える関係性を身につけてもらいます。

2011年に本プログラムを調布市で立ち上げました。時代のニーズに合ったのか、多くの方が夫婦関係、親子関係の相談に来ています。2年前には調布市から活動を認められ、調布市男女共同参画からの依頼で、交流分析のミニ講座を1~2カ月に1回実施しています。

DV加害者更生支援の現状

日本では、DV加害者更生プログラム自体があまり多く行われていません。なぜなら、「DV加害者は治らない」と思われているからだと筆者は考えます。加害者更生支援の専門家であっても「DV加害者は治らない」とはっきり言う人もいます。

DV加害者更生支援をなぜ行っているか

筆者がこの仕事にたどりついたきっかけは、アルコール依存症の家庭で育ったことでした。

両親のことを医者に相談して家族療法にも参加し、心理学を学び始めました。「無知の悲劇」「100家族あってもワンパターン」。家族療法を担当していた医師の言葉です。心理学を学び続け、たどりついた交流分析から、自分の生き方である「人生脚本」を変えられることを知りました。

自分自身の体験から、多くの方に交流分析を知ってもらいたいと活動を続けています。

交流分析を用いたDV加害者更生プログラム

プログラムでは、加害者である夫だけでなく、被害者である妻にも交流分析を伝えています。

交流分析には「人生脚本」という考え方があります。「人生脚本」とは「どう生きていくか」の脚本のことであり、人は幼少期に描いた脚本通りに生きるという考えです。幼少期に破壊的な脚本を描いていたら、破壊的な生き方となります。踏みにじられてもいいという脚本を描いていたら、踏みにじられる生き方を歩むのです。

加害者も被害者も一人ひとりが「人生脚本」を持っており、更生プログラムではそれを見直していきます。

特に被害者の脚本は変えなければなりません。なぜなら、離婚して相手を変えたとしても同じような人に惹かれたり、再婚相手がだんだんと支配的になってきたりということが起こるからです。

おわりに

加害者に対していつも感じるのは、「DVをするのは怖い人たちではない。子ども時代に傷ついている人たちだ」ということです。DVの心理や、幼少期に何を見て学んできたのかを分析しなければ、ただの性格が悪い、ひどい人だと片付けられてしまいます。本当に必要な人に、支援の手は差しのべられていません。

また、被害者の意識も変える必要があります。

学生の皆さんは、将来のパートナーが自分一人に家事を押し付けてきらどう感じますか? メールにすぐ返信しないと不機嫌になったり、誰と会うのか詮索されたり、行動を制限されたりしたらどうでしょうか。

日本人はDVにあったとしても、「これは普通のこと」「自分の我慢が足りない」と感じる方が多いように思います。DVは身近で起こっていて、特別なことではなく、自分も受けているかもしれないと省みる機会が必要です。

交流分析の目標は、人と人とが「親交・親密」な関係を持つことです。親交・親密な関係とは、互いを対等に思い、尊重し合う関係性をいいます。それには、相手のそのままを認めることが大切です。

互いを認め合う夫婦が一組でも増えることが今の日本には必要だと感じています。認め合う両親のもとで育つ子どもは安心感に包まれるでしょう。夫婦が仲の良さを取り戻していく過程に関われるこの仕事は、大変やりがいのあるものだと思います。

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