【連載:わたしのヒストリー】人間的成長なしにセラピストとしての大成はない

株式会社 i プロデュース代表
公認心理師/臨床心理士
石垣秀之

いまの働きかた

平日の日中は、公立の小・中学校でスクールカウンセラー(以下、SC)として勤務しています。学校によってSCへのニーズが異なり、活動のメインが児童・生徒へのカウンセリングだったり、保護者との相談だったり、授業中の児童・生徒の観察や先生方とのコンサルテーションだったりしますが、ほとんどはこれらの複合的な業務です。

発達障害や不登校、家庭問題、対人関係のトラブルなどの相談が多く寄せられます。そのほかの時間は授業を観察したり、休み時間に子どもたちと遊んだり、カウンセリングの記録を書いたり、毎月発行するお便りを書いたり、相談に関係する論文や本を読んで最新の動向を調べたりしています。

東日本大震災後、カウンセリングオフィスを開業し、休日や平日夜間などにTFT®(thought field therapy®:思考場療法®)、EMDR(eye movement desensitization and reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)、臨床動作法、TF-CBT(trauma-focused cognitive behavioral therapy:トラウマフォーカスト認知行動療法)、ニューロフィードバックなどの技法を用いた心理支援を行っています。

震災直後は地震や津波などのトラウマからの回復を依頼されるクライアントが多かったのですが、現在は精神科などの医療機関で長期間治療を受けたにもかかわらず回復しなかったために心理支援を受けようとして来る方や、言語主体のカウンセリング以外を希望する方が多くなっています。

心理職をめざした理由

高校生の時期から漠然と、「人はどうすれば幸せになれるのか」といったテーマについて考えてきました。国内の政治腐敗を改善するためには国民が直接国家の長を選ぶ大統領制が必要なのではなどと考え、大学はアメリカに留学しました。

しかし、その直後(1995年)に日本で阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などが生じ、苦しむ人たちの様子や制度的な支援の限界を目の当たりにし、法や制度が変わっても人の心を直接的に変えることは難しいと考え、結局、個人への心理支援を志し心理学部を選びました。

また、帰国前には神戸連続児童殺傷事件が起こり、人の無意識への興味を追求したいという思いも強くなり、帰国後に臨床心理学を学ぶ大学院に入学しました。

実際になってみて

SCとして働き始めた初期は、「不登校の児童・生徒を登校させる」「児童・生徒の問題行動をなくす」といった表面的な問題解決を目指していたように思います。そんな日々を過ごして5年以上過ぎたころに、私自身がSCとして深く関わっていた不登校経験のある生徒が家庭内の事件に巻き込まれ、命を落としました。それからは、表面的な事象は、結果として現れた医学的「症状」や、心理的な「問題行動」であるほかに、その児童・生徒が発するメッセージとしての側面、成長・変化の過程に現れる適応行動としての側面があるということを忘れずにいられるようになったと思います。同時に、家族支援の重要性を痛感し、現在も継続している、共同親権・共同養育のための個人的・社会的支援を開始しました。

心理職は、生涯学び続ける必要があるとよく言われます。私も個人的な興味から、理論・技法の学習を継続しながら、開業心理士として、クライアントの苦痛を早く楽に改善するための技法を探し続けています。

目の前の1人のクライアントの悩みは、病名や症状名でくくれるものではありませんから、その人個人と向き合う姿勢を大切にすることと、さまざまな技法を状態に合わせて適用するということを両立させるよう、日々努力しています。

これから

各専門技法の研鑽を深め、専門職としての資質を向上させることはもちろんですが、自分自身の人間的成長なしにセラピストとしての大成はないと考えています。そのため、日々の生活の全てに自分の在り方が映し出されていて、それら全てにおいて学んでいくことを意識して過ごしたいと思います。

日本では諸外国に数十年も遅れ離婚後の単独親権制度(法)が残っているために、子どもの連れ去り問題や引き離し問題が多数生じています。私が知っている方でも、虚偽のDV(domestic violence:家庭内暴力)を訴えられ、子どもと引き離され、司法にも見捨てられ、自死された方が複数いました。

当初、法や制度によって人は幸福にならないという思いから心理支援を業として選びましたが、個人的な心理支援だけではどうにもならない法律や司法の壁、そしてその背後にある男女平等参画社会における利権などについて、現場の心理士の視点から社会に訴えかけ、制度改革に力を入れていきたいと考えています。

心理職に就きたいと思っている学生へ

趣味が高じて心理職を選ぶ方もいるでしょうし、自分のつらかった経験や救われた経験から心理職を選ぶ方もいると思います。また、共感性や洞察力などの適性から心理職を選ぶこともあるでしょうし、誰かに勧められて心理職を選ぶこともあると思います。ほかに就職口がないから仕方なく心理職にならざるを得なかった方や、人生の使命と考える方もいるでしょう。職業選択と就業は人のアイデンティティーの重要な要素であり、仕事は人に苦難を与え、人を導き、その人がその人自身になっていくプロセスでもあるといえます。

職業選択の葛藤は、心理職に就く方にとって重要なライフイベントですから、じっくりと考えていていただきたいと思います。

1週間のスケジュール

月~金曜日
9:00~17:00 学校勤務(スクールカウンセラー)
平日夕方・休日
自宅オフィスでカウンセリング、面会交流・監護者指定などのための裁判資料となる意見書の作成など

 

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