第2回 公認心理師資格をとってどうなった? 福祉・教育関係からRESTARTした方々の座談会開催!(後編)│RESTART! はたらく心理職
- 2022-10-18
- Step up!
臨床心理士・公認心理師
にしむら
はじめに
後編は、公認心理師資格の新規取得者へのメッセージをいただきました。前編に引き続き、本音が満載かつ励まされる内容です。また、座談会をふりかえって、公認心理師資格の活かし方を4パターンにまとめてみました。あなたはどのパターンでしょうか? 合わせてお読みいただけますと幸いです。
<座談会の参加者>
Aさん ソーシャルワーカーとして障害者相談支援事業所に勤務。保有資格:精神保健福祉士、公認心理師
Bさん 複数の福祉事業所を経営する傍ら、週1日保健センターで健診業務。保有資格:介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、公認心理師、(介護支援専門員)
Cさん ケースワーカーとしてNPO法人に所属、個人事業でカウンセリング、企業コンサルティング、ウェブライティングなど。保有資格:養護教諭、公認心理師
新規取得者へのメッセージとキャリアRESTARTのヒント
にしむら(以下、N) 皆さんと同じようにほかの専門職から公認心理師資格を取得された方々へ、メッセージやキャリアを考える上でのヒントなどを、お願いいたします。
Cさん ほかの専門職から公認心理師資格を取得し、その資格一本でいこうと考えている人もいるようで驚いたことがあります。資格を取ってみて、それは実際に難しいことがあらためてわかりました。
私は、学校で働く中でさまざまな子どもたちと出会い、彼らが自分の将来を諦めずに自立して未来をつくる支援をしたいと思ったことがきっかけで資格を取得し、公務員から転職しました。NPOに入り個人事業も起こしましたが、軌道にのるまでいろいろな思いや苦労がありました。心理師にプラスして自分のカラーや専門性、その分野への強みがあったほうが良いですね。資格を取ってからがスタートで、その先のキャリアをどう築くのか。資格を取得したら、すぐに次のフェイズに入った方がよいと思います。
最初は、ほかの職種の方と専門性をもって関わるのは大変で、相応の努力が必要です。努力することは義務でもあります。頑張ってほしいし、自分も頑張ろうと思います。
Bさん 資格だけに四角い頭を丸く、ですね(笑)。丸くすることが大事。資格だけじゃシッカクです。
その後のキャリアということですが、私は保健センターに勤めるまでいくつか求職したものの採用されませんでした。公認心理師資格のみで就職できる間口はとても狭いと思います。資格を取ってすぐ新しい仕事に結びつくことではないですね。運もあるし、「これができる」というものがないと。一人で事業を起こすのもすごく大変なことですし、資格が取れたからカウンセリングルームを開きクライアントさんが来る……というイージーなものではないですね。取得してから先が大事だと思います。私も同僚と一緒に、保健センターの業務を行う中で必要なスキルを勉強し始めたところです。
Aさん 現任者向けのGルートで公認心理師になったひとたちもさまざまで、ひとくくりにすることはできないと思います。自分の場合は、根っからの心理職とは異なる動きをすることはあると思います。ソーシャルワークの考え方や方法とは違いがあることが理由です。臨床心理士が担ってきたことの代わりをすることはできないでしょうね。
新しい資格だから「公認心理師はこうだ」というのもまだないとも思います。ほかの専門職でもベースがあって、プラスアルファで公認心理師資格を活かす人もいれば、臨床心理士と同じように働きたい(資格だ)と思う人もいるかもしれません。
しかし後者は、F1のライセンスを持つなかに普通自動車免許で入っていくようなものじゃないでしょうか。後追いでよいので、臨床心理士がしてきたような訓練の必要性を感じます。最近はトラウマケアが注目されていて、対応できる専門職が求められています。私はここに取り組んでいきたいと思っています。
後編をふりかえって:資格取得のその先へ
座談会はとても温かい雰囲気で進行しました。皆さまがご自身を含めて心理職のあり方について真剣に考えていることが分かりました。現任者向けのGルートで公認心理師資格を取った方々が交流することはほとんどなく、貴重な機会であったとのご感想も聞かれました。
ここで指摘されたように、資格を取得しても転職や開業に容易につながるわけでありません。以前の記事のとおり心理職の雇用は不安定で、かつ就職や転職においては「紹介」が4割という現状があります。Aさんのように、現職の中で活かす方が現段階では多いのかもしれません。
仕事を得るため、さらに活かしていくために、日々研さんに励まれていることは、多くの心理職の方々に通じると思います。筆者も、研修、学会、スーパーヴィジョン、書籍代に少なくない時間とお金を費やしてきました。一部は職場で負担してもらうことがありますが、大半が自費で行っています。これについて、他の医療専門職の友人に「いつまでスーパーヴィジョン受けてるの?!」と驚かれたことを思い出します。心理職において、とくにカウンセリングでは個人の裁量に任される部分が大きいことは、自己研さんが生涯にわたって必要となることの理由の一つ一でしょう。研修、自己研さんについては今後の記事で取り上げていきたいと思います。
公認心理師ができたことによって、資格に関連した出版、研修、ウェブサイトが大きく増えました。ほかには、心理職によるYouTubeやメディアでの活動も目立ってきています。以前に比べて、さまざまな方法で心理に関する情報にアクセスしやすくなっていると感じます。現任者から取得を目指す人が多かったことは、このような心理に関する市場の活性化に寄与したのではないでしょうか。
仕事の数に関してはどうでしょうか。正確なデータは持ち合わせていませんが、心理職の求人や採用枠が増えたという実感はありません。求職サイトを覗いてみると、民間の児童発達支援が多くを占めます。児童福祉法の改正と規制緩和によって参入のハードルが低くなり、社会的要請の高まりも相まって事業者が増えていることと、心理職が加算の対象になっているからと思われます。一方、医療機関などその他の求人は低調なままです。私設相談室で採用されるには高いカウンセリングスキルが求められ、スクールカウンセラーも都市部では倍率が高いようです。私設相談室を自ら開業して経営することが大変なのは言うまでもありません。現任者として公認心理師資格を取得し、心理職をメインとして転職をすることはBさんの実感どおり「狭き門」でしょう。Cさんのように実現したいことが明確である場合は、昨年ご紹介したフリーランス心理職のような働き方も選択肢の一つだと思います。
新規取得者は「せっかく取ったのに……」と、すぐに転職などの結果に結びつきにくく残念に思うこともあるかもしれません。ですが、現任者から取得した方には、ご自身の専門分野で培ってきた経験と資格試験で得た知識がありますので、あまり焦らず、独自のカラーとオリジナリティを活かすタイミングを待つことも戦略の一つではないでしょうか。現任者から取得した方には、多職種連携の経験をもつ人が多く、心理的支援の対象者および活動分野を広げるという面で長けていることが考えられ、今後の活躍が期待されると思います。
前編で述べたとおり、公認心理師は新しい資格です。来年度には大学から公認心理師課程を修了して資格取得をした方々が、心理職の現場に出ることが予測されます。心理職はほかの専門職に比べると少数で知名度もまだまだですが、一人ひとりが良い仕事を積み重ねていくことで、徐々に認められてきた経緯があります。資格を取得したルートは問わず、全員がパイオニアだと思います。もちろん苦労もあると思いますが、座談会参加者の皆さんのように、前向きに頑張っていきたいですね。
あなたはどれ? 公認心理師資格の活かし方4パターン
最後に、今回の座談会をもとに、公認心理師資格の活かし方を4パターンにまとめてみました。
①心理的支援を仕事の中心におく ②実現したいことの手段の一つとする ③心理職以外の現職に役立てる ④新しい可能性を探す |
①心理的支援を仕事の中心におく
②実現したいことの手段の一つとする
③心理職以外の現職に役立てる
④新しい可能性を探す
※イラスト中のハートは公認心理師資格と専門性を表しています
本記事をお読みの方には、公認心理師資格をもつ方やこれから目指す方が少なくないと思います。
あなたはどれに当てはまりますか? またRESTARTはどの道へ向かっていますか? ぜひ下記のボタンを押していただき、教えてください。本記事が少しでも参考になれば幸いです。
座談会に参加された皆さまにあらためて感謝申し上げます。今後のますますのご活躍をお祈りしています。
記事への感想、ご意見、取り上げてもらいたいテーマなど、ぜひ下記よりご連絡ください。お待ちしています。
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