心理士が児童発達支援・放課後等デイサービスに携わって|公認心理師に期待すること

福祉領域では「つながり」という言葉をよく耳にする。支援を必要とする人とその周りの人たちとのつながりであったり、制度やサービス、事業所などとのつながりであったり、さまざまな意味で使われる。

NPO法人Viewぷらすは、「ずっとつながる、もっとつながる」という思いのもと、子どもと家族、その周りにいる人たちに支援事業を展開している。当法人の理事を務める臨床心理士・公認心理師の木村 司さんに、児童福祉領域における心理職の役割について話を伺った。

 
―― 近年、児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所が増えています。心理職を採用するところもありますが、どのような場面で必要とされているのでしょうか。

木村 児童発達支援・放課後等デイサービスでは、療育はもちろん、保護者が療育に何を求めているのか、子どもの発達をどう感じているのかを聴くことが大切です。

心理士の持ち味は、「人の話を聴くこと」と「アセスメント」です。当法人では、子どもとの関わりを通した発達のサポートも行いますが、保護者の相談やサポートを心理士が中心に対応しています。

出会いのタイミングである見学時から保護者の不安に寄り添いながら丁寧に話を聴き、さまざまな情報を集めます。同時に、子どもとのやり取りや遊びを通してアセスメントを行います。私たちはその気持ちを受け止め、実際に子どもとの関わりを見せながら「今、こういう反応していましたよね」と事実を伝えます。問題行動が目につき、気づいてもらいにくいその子のすでにできている部分を丁寧に伝え返します。もちろん、保護者の気づいていることも、子どもの反応をもとに伝えていきます。

最初の出会いの段階で、保護者からしっかりと話を聴き、短時間で子どものアセスメントを行い、当法人では何ができるのかを言葉にする。子どもにとって最善の利益につながるような情報の伝え方を心がけています。

 

―― NPO法人Viewぷらすは、2014年に多職種の方々と共同で立ち上げたと聞きました。どのような思いがあったのでしょうか。

木村 大学で心理学を学んでいたころ、心理学ブームが始まりました。ですが、大学や大学院で心理学を修めても、それを生かして安定した職に就くことは難しい時代でした。「心理士が安心して働ける場所を作りたい」という鳥井崇行理事長の強い思いのもと、大学時代に交流のあったメンバーで当法人はスタートしました。

私たちは「切れ目のない支援」を大事にしていますが、公的な機関では、年齢によって相談窓口が変わっていきます。それは、行政側の理由によりますが、就学前から小学校入学、中学校卒業や高校卒業などのタイミングです。また、支援者個人の理由としては、生活のために短期間で職場を変えざるを得ない状況が多く、その場合も支援の継続が困難になります。

子どもはもちろん、子どもを支える保護者が安心して継続した支援を受け続けるためには、支援者側の理由による支援の継続困難を少なくすることが必要です。そのためには、雇用環境の整備が大切です。

それが、「ずっとつながる、もっとつながる」という法人理念となっています。

ここでのかかわりが必要なくなった子どもたちが「そういえばこんなところがあったな」とふと思い出したり、保護者が子どもの成長を気軽に話しに来てくれたり、何か困ったときに相談に来れるような、つながり続ける居場所にできればいいなと思っています。

 

―― 立ち上げ時の印象に残っているエピソードはありますか。

木村 当法人の前身は、不登校や発達障がいの子どもたちの家庭教師でした。この訪問支援への需要は高く、現在も続いています。ですが、収益の点から、さらなる事業展開が必要で、障がい児通所支援の児童発達支援・放課後等デイサービス、保育所等訪問支援を始めました。

2012年4月に児童福祉法が改正された際に、障害者自立支援法の「児童デイサービス」から「障がい児通所支援」として位置づけられ、事業者参入の規制も緩和されました。そのため、社会福祉法人だけではなく、株式会社なども参入できるようになり、児童発達支援・放課後等デイサービスの数は、数年で爆発的に増えた経緯があります。

ただし、公的な施設のように心理士が専門的に療育を行っているところは皆無でした。心理士は、事業所の設置要件に入っていませんし、相談では、加算がほぼ取れないからです。

しかし、当法人では、心理士が活躍する発達支援の専門機関を作りたいという思いから、立ち上げ当初から近隣の発達の気になる子を持つ親の会とのつながりを持ちました。保護者の相談ニーズに沿った療育の提供を目指し、心理士が「保護者と相談をする」「子どものアセスメントをする」「子どもの成長・発達を共に見守る」ということを事業所の付加価値としました。

開所当初は、利用者が集まらず給料を支払えない状況に陥り、しばらく苦労しました。スタッフそれぞれにも家庭の事情や生活があるので、お金のことを気にしつつ、今自分たちに何ができるかを考えました。

結果、当法人の事業所を知ってもらう活動と地域の情報収集にその時間をあて、市や近隣の公的な療育施設へのあいさつと見学に出向き、公的なサービスでサポートしきれない支援や課題の整理を行いました。関係機関に事業所のコンセプトを理解してもらい、安心して紹介してもらえるように、「顔の見える連携」を意識しました。この地域や相談支援事業所とつながる活動が実り、公的な所からの紹介や保護者の口コミによって活動が周知されていきました。

また、当時、大阪府でも保育所等訪問支援を実施しているところは少なく、近隣の市町村でも公的な療育施設以外ほぼない状況でした。そのため、保育園、幼稚園、小学校といった各施設での受け入れは拒否的で、公的な制度であることや心理士という資格を持っていても、民間の一施設が学校園所に入って支援をするということが浸透するまでかなりの時間を要しました。

子どもが所属する学校園所から安心と信頼を勝ち取るために、当たり前のことですが、まずは、あいさつをきちんとする。そして、今まで自分がどういう立場で何をしてきたのかを伝えていきました。それは今でも変わらず行っています。年度変わりには、所属長宛てに、利用している子どもの情報、事業の説明、訪問実績などをまとめた文書を送付しています。

心理士だからといって相談がすべてではありません。このような仕事も、相手に信頼され、安心してもらうために大切です。

 

―― 心理職が介入したことで、支援がうまくいったと思われるご経験はありますか。

木村 集団療育の場合は、集団のリーダーが動きやすいように、心理士はそのサポートをします。リーダーが全体の流れを見渡し、心理士は個々に配慮しながら集団をつなげるように働きかけます。

個別療育であれば、コミュニケーションの質を高めるために子どもの世界に合わせて一緒に遊びます。人に合わせてもらう経験を通して、自分が人に合わせるやり取りを少しずつ積み重ねます。

集団、個別に関わらず、自分の気持ちを言葉や行動でうまく表現できない子どもの気持ちを受け止め、表現しやすいようにサポートするなど、今、本人が持っている表現からやり取りにつなげていきます。

年齢を重ね、言葉でやり取りが十分できる子どもの場合は、カウンセリングを通して、発達の難しさからくる二次障害をサポートします。

また、保護者が送迎をするので、ちょっとした気がかりや何気ない会話から、保護者と相談しやすい状況をつくります。

保育所等訪問支援では、保護者と学校園所とのつなぎ役になります。

保護者にとっての情報源は子どもの話です。子どもの話からいろいろな想像をふくらませます。ですが、子どもたちは、家、学校、事業所といった居場所によって異なる顔を見せています。そして、子どもにかかわる大人はそれぞれの場所で、子どものことを一生懸命思って動いています。そのため、当事者同士だと、「子どものために」という思いは同じでも、うまく歯車が回らないことがあります。

子どものために目指す先はどこか、今できていることは何か。心理士が間に入ることで、対立ではなく協力関係を築くことができます。

 

―― 子どもの福祉領域に携わる心理士にはどのような姿勢が求められるでしょうか。この仕事に向いているのはどんな人でしょうか。

木村 人と関わることが好きで、気を配ることができ、体力のある人が向いていると思います。療育は、子どもの成長発達を身近でみることができる一方、療育中ずっと子どもと関わり続けます。そして、その他の業務もこなす必要があります。

「児童」の対象は0~18歳で、周りには、親、きょうだい、祖父母などの家族がいます。さまざまな年齢の子どもたちと関わることができ、そして、幅広い世代の人とも話ができる柔軟さが必要です。

また、さまざまな制度があり、多様なサービスや支援を展開することができます。自由度が高く、自分で何かをつくりたい方にはぴったりな一方、機関連携やさまざまな制度とつながるという柔軟性がないと難しい領域でもあると思います。

繰り返しになりますが、「障がい児通所支援」において心理士は必要不可欠ではありません。しかし、子どもの発達や保護者のサポートにおいては、心理士は必要不可欠であると私は思っています。なので、そういった気概を持ち、「人とつながり、人とつなげる」ことができる方が、この領域でたくさん増えるといいなと思います。

 

―― 木村さんが大切にしているのはどのようなことでしょうか。

木村 心理士としてのスキルはもちろんですが、何より大切なのは、人とつながるためのスキルと日常を想像する力です。いくら心理士のスキルが高くても人とつながるためのスキルがなければ、その支援は届きません。

保護者は、相談をするまでにいろいろなことを考えて、やっとの思いで相談をします。その入り口が、電話対応であったり、出会ったときのあいさつです。電話での対応の仕方、何気ないあいさつの仕方、自分の言葉がどのように相手に伝わっているか想像します。

整理整頓や掃除にも気をつけます。保護者にどのように見られているか、来所したときに良い気持ちで過ごしてもらうには、子どもを安心して預けてもらうには、といったことを想像します。

これらは、心理士として必要ないように思うかもしれませんが、カウンセリングをする以前のスタート地点に立つ前のゼロの視点です。この出会いの前のところを意識することで、支援の開始がスムーズになります。また、日頃の何気ないあいさつ、掃除や整理整頓など、人として当たり前のやりとりは人に安心を与えます。

いくら良い支援があってもそれが届かないことには意味がありません。それを相手に届けるために、わかりやすく安心を与える。そして支援を届けたときに、さらに専門的なスキルで安心を与える。心理学を学んできた以上、そういう目に見えるところと目に見えないところに気を配れる心理士が増えることを願っています。

 

(インタビュー・文/社会福祉法人つむぎ福祉会生活支援センターコットン 相談支援担当 臨床心理士・公認心理師・相談支援専門員 永福沙都子)


木村 司 Tsukasa Kimura
NPO法人Viewぷらす 通所支援事業所とことこ
リンクプロジェクト 就学児担当責任者 臨床心理士・公認心理師

「ずっとつながる、もっとかかわる」の法人理念のもと、発達障がい、不登校の子ども、その関係者の方々への支援をミッションに、子どもや保護者への直接支援、講師派遣、次世代支援者育成に力を入れる。『LinkProject』(つながりプロジェクト)と称し、通所支援事業、訪問支援事業、相談事業を展開している。

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