Report|オンラインシンポジウム 心理職で食べれるか

臨床心理士 公認心理師
西村嘉子

はじめに

2020年7月25日(土)、午後7時~8時30分「オンラインシンポジウム 心理職で食べれるか」がYouTubeで開催されました。

このイベントは、筆者とKiyokiyo氏(臨床心理士、公認心理師)との「心理職の働き方って独特」「自分たちの考えを発信し、気軽に話し合える場があれば」という対話から生まれました。

特定の団体とは距離を置いた個人のアクティビティであり、SNS、口コミ、メーリングリスト、そして「こころJOB」サイトを通し、約1カ月の広報を行いました。前日の段階で予想を上回る110名から申込みがあり、ZoomミーティングからYouTube配信に急遽切り替えて開催しました。聴講者は、約70%が現役の心理職、約30%が心理の仕事を志す学生でした。

3つの話題提供とディスカッション:心理職の今、多様な働き方、語られたモヤモヤと課題

Kiyokiyo氏からは『一度は疑ってみよう!心理職の常識』というタイトルで話題提供がありました。食べるため・仕事に就くための方法、所属学会の選択法、一人職場のメリット、マーケティングの視点の導入、そして法律など、社会の動きを踏まえた働き方を提案されました。

筆者は『心理職として働く女性のモヤモヤと乗りこえ方』というタイトルで、主に医療機関での経験をもとに、収入と待遇の実際、ジェンダー格差、子育て世代のワークライフバランスの困難、そして「食べていくためのヒント」を示しました。

たとえば、ジェンダー格差の具体的な話題として、臨床心理士の男女比は1:3.5であるが関連学会・職能団体の役員の割合は男性が多いこと、民間労働者における男女の年収には200万円以上の差があることなどを紹介しました。

配信中、筆者の子どもが乱入したり、生活音が入ったりする場面がありましたが、参加者の方々が温かく見守ってくださり、ありがたく思いました。

ゲストの徳田勇人氏(Assemble代表・臨床心理士)からは『団体運営や支援者向けキャリアコーチングを通して考える心理職の新しい働き方』というタイトルで、代表を務める支援職向け団体「Assemble」立ち上げの経緯と、「食べられない」要因の分析、心理職の社会的価値を他業種に明示できていない現状の指摘、専門職向けのスナック運営などの活動紹介がありました。

3人とも少し緊張していましたが、ゆったりとオープンな雰囲気で進んでいきました。

ディスカッションは、YouTubeのコメント欄を利用して行いました。コミュニティ作り、マーケティング、社会的役割、スーパービジョン、就職活動、ジェンダー格差の解消法、フリーランスの成功事例など、次々に質問が挙がりました。

YouTube配信のシステム上、相互に顔を見てのやり取りはできませんでしたが、匿名だから質問できる内容が寄せられたように思いました。シンポジウム終了後に設けた30分間のフリートークにも50名ほどが残り、さらなる本音を話し合うことができました。同日から、SNSで「#しんたべ」のハッシュタグを用いて、オンライン上の交流も始まっています。

ふりかえって

開催後のアンケートでは、94%の方が「とても満足」または「やや満足」と答えました。

次回開催については、96%の方から「また聴講したい」と回答いただきました(回収率58%)。自由記述では、さまざまな心理職の本音と共感の声、学生からの素直な感想、そして運営への助言をいただきました。また、今後、企画運営やシンポジスト側になることを希望する方も一定数おられました。

働き方に関する問題意識は高く、自分たちや心理業界のためにアクションを起こすことへの共感が集まったことは、筆者らの予想を上回るうれしい反応でした。

初めてのイベント開催で未知数な部分が多くありましたが、多数の方が参加し、既存の学会や学校では話題にづらい率直な内容を取り上げ、組織や所属にとらわれないパーソナルな発信と交流ができました。同時に、参加者の方々との交流によって、企画運営側がエンパワメントされるような経験でもありました。

コロナ禍によって、業務や学校生活にさまざまな影響があり、少し立ち止まって心理職の働き方を考えていた人も多いのではないでしょうか。そんな今だからこそ、本イベントは関心を集めた面もあったように思いました。

一方、運営の不備で、一部参加予定の方に連絡が届かずご迷惑をおかけしたことを、この場を借りてお詫び申し上げます。

心理職で食べられるか?

本シンポジウムのテーマ「心理職で食べれるか」の問いかけに関しては、「食べられる」と答えたいと思います。シンポジスト3人に共通するのは、たゆまぬ研鑽(さん)、時代を読む目、法律の知識、公私のネットワークをもつなど、心理職の特性を知った上で、個人の工夫を行っていることでした。一方、キャリアや考え方はさまざまで、個人に合った働き方をある程度選択できることも、心理職の特徴かもしれません。

おわりに、心理職においても女性のキャリア形成には、さまざまな壁が構造的に存在し、「食べられない」ことに陥るリスクを有すると思います。そのための解決策を見つけて実行していくことが、心理職が本当の意味で社会的価値をもち、安心して「食べられる」存在になることにつながるのではないでしょうか。

 

 

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