公認心理師受験申込者の保有資格の幅広さと資格取得後のキャリア

はじめに

2018年に第1回公認心理師試験が実施され、28,574名が合格しました。第2回試験では7,864名が合格しています。2020年の第3回試験は、新型コロナウイルス感染拡大によって延期となり、2020年12月20日(日)に実施予定です。

公認心理師資格試験を運営する一般財団法人日本心理研修センターは、受験票発行者に対してアンケートを実施しています。2020年5月には、第2回試験のアンケート結果が公開されました1)

さまざまな資格保有者が公認心理師試験を受験している

第1回試験・第2回試験の受験票発行者に対するアンケート結果より、申し込み時点で保有している資格を多いものから順に並べました1)

 

【保有資格ランキング(10位までを記載。複数回答あり)】

第1回試験
1位 臨床心理士
2位 教員(幼稚園~高等学校)
3位 精神保健福祉士
4位 教員(大学・大学院)※職種として
5位 臨床発達心理士
6位 社会福祉士
7位 保育士
8位 学校心理士
9位 特別支援教育士
10位 看護師

第2回試験
1位 教員(幼稚園~高等学校)
2位 臨床心理士
3位 精神保健福祉士
4位 社会福祉士
5位 保育士
6位 看護師
7位 臨床発達心理士
8位 学校心理士
9位 教員(大学・大学院)※職種として
10位 特別支援教育士

 

ほかには、医師、保健師、介護福祉士、作業療法士が挙がっています。臨床心理士や臨床発達心理士、学校心理士といった心理系、精神保健福祉士、社会福祉士といった福祉系の資格保有者が多いことは、イメージがつきやすいでしょう。

公認心理師試験の合格率は、第1回試験は79.1%、第2回試験は46.4%でした。合格率が下がった背景には、心理専門職である「臨床心理士」の受験者数が関連していると考えます(第1回試験では全体の68.75%、第2回試験では24.83%)。

なぜ幅広い資格保有者がいるのか

公認心理師試験の受験には区分A~Gのルートが用意されています2)

厚生労働省ホームページより引用)

この区分G、いわゆる現任者ルートは、実務経験5年が認められ(公認心理師法第2条第2項)、現任者講習会を受けることで受験可能です。つまり、資格有無にかかわらず、さまざまな職場で心理業務を行っていた人が受験できるのです。

この現任者ルートで受験できるチャンスは2022年の第5回試験までです。

受験にあたっては現任者講習会の受講が必須です。決して合格率が高い試験ではありませんので、受験を考えている方はチャレンジの意味も込めて、令和2年度の現任者講習会を受講し、第4回試験を受験することをおすすめします。講習会は、現時点で実務経験の必要年数を満たしていない場合でも受講可能です。

第1回試験・第2回試験をみると、専門的な知識を持っていないと判断に迷う問題も多いです。しっかりと勉強する計画を立てて臨んでください。

これまでは指定された場所で講習会を受けるしかありませんでした。しかし、令和2年度の現任者講習会では新型コロナウイルス感染対策として、オンラインでの受講が導入されます。

令和2年度の現任者講習会に関する厚生労働省ホームページなどを参考に、最新情報をチェックください。

さいごに:公認心理師資格取得後のキャリア

資格取得後、「公認心理師の資格を生かして働きたい」と、新たなキャリアを考えることは当然のことです。

求人情報の応募要件に「公認心理師資格保有者」「公認心理師資格取得見込み」と記載されているものも増えてきました。

しかし、採用担当者に詳しく聞いてみると、「できれば公認心理師のほかに産業カウンセラーを持っている方」「病院でのカウンセリング経験が2年以上ある方」「心理検査業務を実施できる方」など、さまざまなニーズが挙がってきます。

資格を取得したからといって、すぐに転職先が決まるわけではありません。求人情報を収集し、気になるものがあれば、積極的に問い合わせてみてください。

もちろん、現在の職場でこの資格を生かし仕事の幅を広げることもキャリアアップの1つでしょう。

資格を取ることはスタートであり、ゴールではありません。心理専門家として自己研鑽を続けることは責務といえます。

公認心理師資格の保有者が参加できる研修会などもあります。一般社団法人日本公認心理師協会や、一般社団法人公認心理師の会の情報も、ぜひチェックしてみてください。

多様な資格保有者が公認心理師資格を取得していることに対して、さまざまな意見があります。ですが、資格に拠って立つのではなく、専門職として、自分ならではのスキルを磨いていくことが最も大切なことだと考えます。

 

引用・参考文献
1)一般社団法人日本心理臨床センター.公認心理師試験受験申込時における調査・アンケートの結果について.http://shinri-kenshu.jp/topics/20200518_1706.html(2020年6月30日閲覧)
2)厚生労働省.受験資格取得方法.https://www.mhlw.go.jp/content/000306882.pdf(2020年6月30日閲覧)
3)厚生労働省.令和2年度開催公認心理師現任者講習会.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11724.html(2020年6月30日閲覧)

 

(文・構成/こころJOB編集室)

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